ラン科植物の種子発芽および初期発育の様相に関する研究
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概要
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47種のラン科植物を供試し, 種子の発芽および幼植物への発育経過の様相をそれぞれ調査した.<BR>1.供試材料47種の種子発芽時の胚の色は, 白色(32種), 淡黄色 (3種), 淡緑色 (7種) および緑色(5種) を呈する4群に分けられた. なお, エビネ属の20種では淡黄色 (3種) および白色 (17種) を呈する2群がみられた.白色を呈する胚は, 発芽後プロトコームを形成する過程において, 徐々に黄緑色から緑色を呈するようになるが, キンラン, サイハイランおよびオニノヤガラのプロトコームは白色のままとどまっていた.<BR>2.プロトコームの表面の隆起した部分には, 細長い単細胞の仮根が発生し, チシスおよびパフィオペディラムでは1本, その他の種では6~10本密生していた. なお, オニノヤガラには仮根はみられなかった.幼植物の根には, キンランを除いて白色を呈した多数の根毛がみられた. なお, サギソウおよびウチョウランでは, 幼植物から発生した根の一部が肥大し球根の形成がみられ, 球根形成後は地上部が徐々に枯死した.<BR>3.仮根の発生開始は, 発芽後3日 (シラン) から発芽後155日 (ヒゼン), 根の発生開始は, 発芽後33日 (エビネおよびシラン) から発芽後333日 (トクノシマエビネ) の範囲にあった. 仮根および根の発生開始の所要日数は, 発芽時の胚が白色を呈し, プロトコームが逆三角型の種では, 丸型および楕円型の種に比較して, 長くなる傾向がみられた. また, 仮根の発生開始までの所要日数が短い (長い) 種は, 根の発生開始までの所要日数も短く (長く) なる傾向が認められた。<BR>4.温帯性に属するシンビジウム属の種では, プロトコームの頂芽が下方に向かって伸長して地下茎を形成し, 分1岐しながら伸長し続けた. 地下茎の伸長が停止した後に, 頂芽が上方に向かって伸長し, 幼芽と根を分化して幼植物を形成する.<BR>5.供試材料47種のうち, 温帯から暖帯産の地生種は一般に, 種子発芽時の胚は白色を呈し, 発芽後の発育が緩慢で, 発育も不揃いとなる傾向がみられた.一方, 暖帯から熱帯産の地生種および着生種は, 種子発芽時の胚は淡黄色~緑色を呈するものがほとんで,発芽後の発育が早く, 発育も斉一になる傾向がみられた.<BR>6.種子発芽時の胚の色, プロトコームの色および形態, ならびにプロトコームからの仮根および根の発生開始までの所要日数のそれぞれにおいて, 亜科の特性は認め難かった.
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