音感についての実験的検討 : 某合唱団員における音響負荷による音程の正確度について
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概要
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われわれはさきにピアノでc´の音を聞かせ両耳に音響を負荷して, c´よりc´´までの1オクターブを発声させた場合, 音程が著明に上昇する傾向があることを報告した. この現象は被検者が音楽的に訓練されているか, いないかによって異なると思われるので, 今回は3年以上の経験のある某合唱団員の女子9名を選び音響負荷の発声に及ぼす影響について検討した.<BR>実験方法は被検者にピアノでc´の音を聞かせ, 直ちに, c´よりc´´までの1オクターブをド, レ, ミ……の如く8音を発声させた (上行音階). 次に, ピアノでc´の音を聞かせ, 直ちに, 両耳に90dBのwhite noiseをあたえて, c´よりc´´までの1オクターブを同様に発声させた. また, ピアノでc´´の音を聞かせ, 直ちに, c´´よりc´までの1オクターブをド, シ, ラ, ……の如く発声させた (下行音階). 次に, ビアノでc´´の音を聞かせ, 直ちに, 両耳に90dBのwhite noiseをあたえて, c´´よりc´までの1オクターブを同様に発声させた.<BR>音声は喉頭マイクを用いて録音し, 音声の基本周波数の測定はユニバーサル, カウンター及び, オッシレーターによる波形と同期させる方法によって測定した.<BR>成績は, ピアノでc´を聞かせ, 直ちに, c´よりc´´までの1オクターブを発声させた場合の9例の平均値は, c´は262Hz, d´は293Hz, e´は330Hz, f´は346Hz, g´は390Hz, a´は436Hz, b´は491Hz, c´´は514Hzであった. noiseをあたえた場合の平均値は, c´は262Hz, d´は298Hz, e´は335Hz, f´は353Hz, g´は397Hz, a´は448Hz, b´は496Hz, c´´は523Hzであった. 次に, ピアノでc´´の音を聞かせ, 直ちに, c´´よりc´までの1オクターブを発声させた場合の平均値はc´´は517Hz, b´は491Hza´は436Hz, g´は389Hz, f´は346Hz, e´は327Hz, d´は289Hz, c´は260Hzであった. noiseをあたえた場合の平均値は, c´´は521Hz, b´は495Hz, a´は441Hz, g´は395Hz, f´は358Hz, e´は333Hz, d´は295Hz, c´は263Hzであった.<BR>以上, 9例についてnoiseをあたえて1オクターブを上行音階で発声させた場合, 各例について検討すると, 音階が上昇するに従い所定周波数値より高い音程で発声する群は5例であり, noiseをあたえても殆んど影響のない群は4例であった.<BR>ピアノでc´及びc´´の音を聞かせ, 直ちに, 発声した場合, 即ち, 追唱について音程の上昇した群でのc´の値は260Hzより265Hzまでであり, c´´の値は514Hzより528Hzまでの範囲であった. noiseの影響の殆んどない群ではc´の値は253Hzより267Hzまでであり, c´´の値は510Hzより521Hzまでの範囲であった. このことは追唱では音程の上昇した場合と然らざる場合とを比較して相異は殆んどなかった.<BR>結論として, 1) 9例中4例はnoiseをあたえた場合, 上行音階, 下行音階とも音程の変化は殆んどなかった. 2) 5例ではnoiseをあたえた場合, 上行音階で音程が上昇するが, 下行音階では殆んど変化を認めなかった. 3) 音楽的訓練をうけてもnoiseをあたえて発声すると音程の変化をきたす例は約半数であった.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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