食道発声機構の研究
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概要
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喉頭全摘を受けた患者は毎年増加している. 発声の器官を取り除かれて, 他人と意志の疎通ができなくなった人々に対して, すぐれた代用音声が必要である. 種々の代用音声の中, 器具を用いない食道発声は最も便利であり有用である.<BR>本研究の目的は舌, 軟口蓋, 咽頭, 下顎, 仮声門および食道の運動パターンを, レ線映画を用いて解析し, 食道発声中の肺呼吸の流れを同時記録して調査した.<BR>1. 空気摂取, 45例の食道発声者をくりかえし観察して, 空気摂取の方法を次の五方法に分類した. 吸気相における注入, 呼気相における注入, 呼吸相と無関係な注入, 注入を行わない直接吸引, および吸引後の注入である. それぞれ吸気注入法, 呼気注入法, 注入単独法, 吸引単独法および吸引注入法と名づけた.<BR>2. 注入運動, 三つの舌運動がみられた. 舌単独のpress運動, 舌下顎press運動, および舌咽頭press運動である.<BR>3. 仮声門の形態, pharyngo-esophageal junctionの形については個体差がみられた. しかし5型にまとめられた. 単純型, 声門下腔形成型, 喉頭型, 多声門型, および不完全型である.<BR>4. 食道運動, dynamicな食道運動は各空気摂取法に特長的であった. とくに吸気相注入のものでは, 食道は最も急速な拡張がみられた. 発声では食道収縮のdynamic patternは多様性にとんでいた. 食道下部ではpassiveな平行収縮が強い呼気におけるdiaphragmaの上昇にともなってみられ, 一方食道上部ではactiveなしぼり上げ運動がみられた.<BR>5. 音声習熟の程度は音声学的な方法で観察された. 最もすぐれたspeakersは次の症例にみられた, 吸気相注入を行ない, glosso-pharyngeal press movementを行い, 仮声門の形についてはsimple formかsimple form with subglottic spaceの例においてみられた.
著者
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佐藤 武男
大阪大学医学部耳鼻咽喉科学教蜜
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中島 礼士
大阪大学医学部耳鼻咽喉科
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藤井 興年
大阪大学医学部耳鼻咽喉科
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藤見 克彦
大阪大学医学部放射線医学教室
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佐藤 武男
大阪大学医学部耳鼻咽喉科学教室
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佐藤 武男
大阪大学医学部耳鼻咽喉科
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