亜鉛(II)-トリエチレンテトラミン六酢酸キレートのPMRと溶存状態
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概要
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亜鉛イオンとトリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)とを種々のモル比で含む重水溶液のproton magnetic resonance (PMR)スペクトルを観測した.その結果,亜鉛:TTHAが2:1のとき,pD3〜7(pD=-log[<SUP>2</SUP>H<SUP>+</SUP>])の範囲で,分子内に対称中心をもつ構造の2核錯体が安定に存在することがわかった.亜鉛の回りは窒素原子2個とそれに結合した酢酸基の酸素原子2個とで四面体型4配位構造になっていることを明らかにした.pD8以上では2核錯体は分解して水酸化亜鉛を生じた.一方,亜鉛:TTHAが1:1の組成のときは,pDの変化にともなってPMRは著しく変化し数種の溶存錯体が生成することを示した.すなわち,i)pD9〜12の範囲では,分子内配位構造に速い交換のある単核錯体が生成し,これがpD≅13では一部塩基性錯体に変化していること,ii)pD6〜8では新たにモノプロトネート単核錯体が認められ,iii)pD3〜5では2核錯体とジプロトネート単核錯体の両方の存在がわかった.pD<8では配位していないTTHAも平衡に存在していた.<BR>pH10で亜鉛標準液によるTTHAの滴定をしたところ,PMRの結果に相反してほぼ2:1の結合比で終点となった.これは2核錯体と単核錯体の安定度定数の差が比較的大きいこと,指示薬の鋭敏さが不足していることのためとわかった.
- 社団法人 日本分析化学会の論文
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