新しい変異型α1-antitrypsin欠損症(PiMnichinan)の1家系特に肝細胞内に認めたdiastase抵抗性PAS染色陽性顆粒に関して
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
α1-antitrypsinの血中濃度と生物学的活性値が,正常人のほぼ1/10で,異なつた条件下の電気泳動で正常型Pi MMと鑑別が出来ない,欠損型の新しい変異型を発見し,その電気泳動学的性状,家系調査と臨床所見,とくに肺および肝生検所見などについて報告した.発端者は42才,主婦.昭和53年5月,気管支炎で日南市某病院を受診し,血清α1-globulin分画の低値を指摘され,精査のため当科に入院した.血清のα1-globulin分画0.7% (49mg/dl), α1-antitrypsin 17.9mg/dl, trypsin inhibitorycapacity 0.104 trypsin mg/mlと著減し, α1-antitrypsin欠損症と診断した.理学的所見では異常なく,肝機能検査成績はほぼ正常で,胸部X線像,肺機能検査,動脈血ガス分析,肺血流シンチグラムなどで,肺気腫を示唆する所見は得られなかつた.肝生検標本で,小葉辺縁部肝細胞内に, diastase抵抗性PAS反応陽性で,蛍光抗体間接法によりα1-antitrypsinの特異蛍光を示す,径1〜4μのglobulesを認めた.発端者のα1-antitrypsinは,酸性殿粉ゲル,交叉免疫,等電点などの各電気泳動条件下で,易動度がPi MMと区別が困難で,量的にも著しく少ない成分からなることから,この遺伝子を国際命名法に従いPi Mnichinanと命名した.家系調査では,両親は「またいとこ」結婚で,発端者とその妹がhomozygoteで,母親や同胞など3代にわたり, 10名のheterozygoteが,確認されたが肺疾患や肝患のものは見出せなかつた.遺伝形式は従来の報告と同じく,相互優性と考えられた.
- 社団法人 日本内科学会の論文
著者
-
福間 道雄
宮崎医科大学
-
津田 和矩
宮崎医科大学第二内科
-
中村 東樹
宮崎医科大学第二内科
-
小川 皓
宮崎医科大学第二内科
-
久野 修資
宮崎医科大学第二内科
-
橋 宣祥
宮崎医科大学第二内科
-
福間 道雄
宮崎医科大学第二内科
-
津田 和矩
宮崎医科大学医学部第2内科
-
中村 東樹
宮崎医科大学医学部第二内科
関連論文
- 307 ヤケヒョウヒダニ虫体抗原に対する気管支喘息患者の免疫応答の研究(3) : リンパ球増殖反応におけるHLA class II抗原の役割
- ヤケヒョウヒダニ虫体抗原に対する気管支喘息患者の免疫応答
- 187 ヤケヒョウヒダニ虫体アレルゲンに対する気管支喘息患者の免疫応答の研究(2)
- 366 ヤケヒョウヒダニ虫体精製抗原に対する気管支喘息患者の免疫応答の研究(1)
- 遺伝的保因者
- D-ガラクトサミン肝障害の発生機序に関する研究
- 新しい変異型α1-antitrypsin欠損症(PiMnichinan)の1家系特に肝細胞内に認めたdiastase抵抗性PAS染色陽性顆粒に関して
- 中脳への腫瘍塞栓により多食症をきたした原発性肝細胞癌の1剖検例
- 瀉血療法が有効であった晩発性皮膚ポルフィリン症の1例
- 筋肉病変とdisseminated intravascular coagulationを呈したcytophagic histiocytic panniculitisの1例
- 2種の副腎皮質ステロイド製剤で,重篤なアナフィラキシー様ショックをきたした気管支喘息の1例
- 初期肝硬変を発症した遺伝性α1-antitrypsin 欠損症の1例
- 特発性気腹の1例
- Dynamic Changes and Function of Protease Inhibitors:-α1-Antitrypsin and α2-Macroglobulin-
- A New Deficient Variant of α1-Antitrypsin (Pi MNichinan) Discovered in Nichinan City, Miyazaki Prefecture
- SUMMARY