走査電子顕微鏡による耳小骨の観察 : 正常ならびに中耳炎の耳小骨表面像
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概要
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目的:中耳腔の慢性炎症の際には,耳小骨にも炎症が波及し,耳小骨に種々の病変を惹起する.耳小骨の病変として,カリエス•骨欠損が著明なものであり,多くの臨床的,病理組織学的な研究がなされている.今回,われわれは慢性中耳炎にともなう,耳小骨カリエス•骨欠損の本態を解明する目的で,近年開発された走査電子顕微鏡を用いて,耳小骨カリエス•骨欠損につき,その表面微細構造を三次元的に観察した.同時に正常耳小骨の表面構造も観察し,比較検討した.実験方法:慢性中耳炎の際に得られた耳小骨を材料とした.これらの耳小骨は中性ホルマリン固定後,トジプシン,プロナーゼで処理し,耳小骨表面より粘骨膜,病的肉芽を除去した.アセトン上昇系列で脱水し,空気中で乾燥後,カーボン,金二重真空蒸着を施し,JEM-3型走査電子顕微鏡で観察した.耳疾患の既往歴のない患者で剖検時に得られた耳小骨を対照標本として用いた.結果:1)正常耳小骨表面.耳小骨表面は膠原線維が集合した膠原線維束によつて掩われている.膠原線維束の配列様式よう,耳小骨表面をA,B,C型の3種類に分類した.従来の骨組織の組織学的研究,あるいは最近の走査電子顕微鏡による骨の検索結果より,A型は層状骨,B型は叢状骨,C型は束髪状骨であると推定した.2)慢性中耳炎の耳小骨表面.耳小骨カリエス.骨欠損部の骨の表面構造を観察した.手術用顕微鏡下で著変を認めない粘骨膜下の骨表面にも,カリエスの発生,膠原線維束の表面構造の変化がみられた.骨表面に開口する栄養管に閉塞様の変化がしばしば観察された.以上の所見について若干の考察を試みた.
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