Elcatoninの抗高血圧作用に関する研究
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概要
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合成calcitonin誘導体,elcatoninの血圧に対する作用を検討した.elcatoninは正常血圧ラットの血圧を30〜100u/kg,s.c.で僅かに低下させたにすぎなかったが,自然発症高血圧ラット(SHR)およびDOCA/saline高血圧ラットの血圧を用量依存性に,かつ持続的に低下させた.特にDOCA/saline高血圧ラットにおける作用は著明であり,0.3U/kg,s.c.にても有意な血圧下降が認められた.SHRおよびDOCA/saline高血圧ラットに10および30U/kgを3週間連日皮下投与して血圧を経日的に測定したところ,SHRでは投与開始14日目に,DOCA/saline高血圧ラットでは同4日目で最低値に達し,以後の投薬期間中そのレベルが維持された.投薬中止により血圧は回復傾向を示したが2週間後においてもなお対照群より有意に低値であった.正常血圧ラットに対しては同用量を6週間連日投与したが血圧に影響がみられず,投薬中止後3週間の血圧にも変化はみられなかった.また,高血圧発症前からSHRおよびDOCA/saline処置ラットに10および30U/kgを連日9週間皮下投与したところ,SHRでは対照群の血圧が177mmHgに達した6週間以後および149mmHgに達した3週間以後の血圧が,DOCA/saline処置ラットでは139mmHgに達した3週間以後および128mmHgに達した2週間以後の血圧が対照群より有意に低値となった.DOCA/saline高血圧ラットにおいてelcatoninはnoradrenalineの昇圧作用を抑制する傾向を示したが有意ではなかった.vasopressinおよびangiotensi IIの昇圧作用ならびにisoproterenol,acetylcholineおよびhistamineの降圧作用に対して何ら影響を及ぼさなかった.さらに,副甲状腺を摘除してもelcatoninの抗高血圧作用は抑制されず,ヒトPTH-(1-34)の降圧作用に対してelcatoninは増強効果を示さなかった.以上,elcatoninには高血圧の発症を予防し,高血圧を下降させる作用が認められるが,これらの作用にはPTHの関与はなく,また,α,β,angiotensinおよびvasopressin受容体に対する遮断効果も関係しないようである.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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戸田 昇
滋賀医科大学
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戸田 昇
滋賀医科大学薬理学教室
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高柳 法康
東洋醸造医薬品研
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戸塚 鉄男
東洋醸造株式会社研究所
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高柳 法康
東洋醸造株式会社医薬品研究所
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戸塚 鉄男
東洋醸造株式会社医薬品研究所
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