麦角アルカロイド誘導体,Lisurideの中枢作用―ラット脳局所グルコース利用に対する促進効果―
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概要
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lisurideは強い中枢dopamine作用ならびに中枢serotonin作用を有する麦角アルカロイド誘導体である.脳機能と密接に関連する脳内微細部位のグルコース利用へのlisurideの影響を検索するため,autoradiographic 2-deoxyglucose法により覚醒・麻酔ラットおよび黒質傷害ラットを用いて検討し以下の結果を得た.1)覚醒ラット脳灰白質部位のグルコース利用率は脳部位によってさまざまで50〜150μmoles glucose/100g・minを示し,特に大脳皮質において高いグルコース利用が認められた.一方,白質部位では,灰白質の約1/3-1/5の低いグルコース利用性を示した.lisurideは覚醒ラット小脳灰白質(山頂葉・虫部葉・虫部垂・小脳半球)のグルコース利用を用量(0.05,0.25,0.50mg/kg s.c.)に依存して高め,約80%の促進が認められた.視床外側核でも25%の有意な促進が見られ,他の灰白質部位でも促進傾向が認められた.しかし,海馬・扁桃体・視床下部・乳頭体・上丘・橋・白質部位でのグルコース利用には全く変化はなく,運動量増加などに由来する変化とは異り,lisurideの促進効果には部位特異性が認められた.2)haloperidol,sulpiride前処理により脳内グルコース利用は低下し,lisurideの促進効果は消失した.3)pentobarbital麻酔ラット・γ-butyrolactone投与ラットでのグルコース利用は,分割した全ての脳部位で覚醒ラットの約1/2に低下した.この低下に対してlisurideによる促進効果は認められなかった.4)一側黒質破壊ラットの傷害側聴覚皮質のグルコース利用は約15%低下し,この低下に対しlisurideは低用量で促進効果を示した.以上のように,小脳・視床でのグルコース利用を高めることよりlisurideが大脳皮質からの運動支配の調節機能(運動協調性)を高めることが期待される.また,lisurideの促進効果がdopamine受容体blockerで消失することより,lisurideの中枢dopamine作用と脳内グルコース利用への影響との関連性が示唆された.
著者
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宮澤 友明
日本シェーエリング(株)研究部
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押野 臨
日本シェーリング
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東 治喜
日本シェーリング(株)研究部
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東 治喜
日本シェーリング株式会社研究第II部
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石川 智久
北海道大学応用電気研究所
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宮澤 友明
日本シェーリング株式会社研究第II部
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