ラット摘出灌流肝臓における薬物の胆汁中移行過程に関する研究
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概要
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薬物の胆汁中移行過程の詳細な解析は,<I>in vivo</I>では全身的な因子が加わり困難である.本研究は,代謝されることなく速かに胆汁中に排泄されるヨウ素系胆道造影剤のiotroxic acidを用いて,蛋白を含まない灌流液で灌流したラット摘出灌流肝臓での胆汁中移行,ならびにiopodic acid,BSP,dexamethasone-21-sulfate(DXMS)との拮抗性を検討した.iotroxic acidは速やかに肝臓内に移行し,灌流液からの消失のkineticsは灌流後60分迄一次反応速度式に従ったが,その一次速度定数は灌流液中初濃度の増加とともに減少した.肝臓内濃度は灌流液中濃度に依存して増加し,約2.8μmoles/g liverで上限値を示した.この値は蛋白結合性が強く肝蓄積性の高いiopodic acidの肝内蓄積飽和値,ならびに胆管結索肝臓での肝臓内iotroxic acid濃度の最高値とほぼ一致した.胆汁中iotroxic acid最高濃度,排泄最高速度は肝臓内濃度に関係なく,それぞれ20〜24mM,38〜48nmoles/min·g liverの一定値を示し,用量を高めても排泄速度,胆汁中濃度は最高値を示す時間が延長しただけであった.iotroxicacid排泄時には滲透圧性利胆作用により,胆汁流量は約2倍に増加し胆汁色素濃度は低下した.BSPはiotroxic acidの肝臓内から胆汁中への移行を阻害することなく肝へのとりこみを著しく阻害した.iopodic acidの肝臓内蓄積後ではiotroxic acidの肝への移行は著しく低下し,肝臓内濃度と胆汁への排泄最高速度はそれぞれ対照の20%,50%に低下した.DXMSの胆汁中移行はiotroxic acidまたはiopodic acidの共存下で完全に阻害されたが,肝へのとりこみはiopodic acidで部分的に阻害をうけたのみであった.以上の結果よりiotroxic acidの肝臓内への移行は受動拡散と肝内蛋白との結合により見かけ上能動的な輸送様式を示し,肝臓より胆汁中への移行はcarrierによる能動輸送機構を介すると結論される.また他の薬物との拮抗性から,少くともアニオン性有機化合物の胆汁中への移行には共通の機構が介在すると推定される.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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