薬物の化学構造と胆汁中排泄について ―ヨウ素系造影剤の摘出灌流肝臓並びに<I>in vivo</I>における胆汁中排泄―
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概要
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ラット摘出灌流肝臓を用いてtriiodobenzeneを基本骨格とする8種のヨウ素系造影剤の胆汁中移行動態と化学構造との関連性を比較検討し,さらに3種の造影剤については<I>in vivo</I>に於ける動態をも併せて観察した.灌流肝臓に於ける各造影剤の動態は,肝細胞膜透過(肝臓内への移行速度),肝臓内蓄積(細胞内蛋白との結合性),胆汁中移行(能動輸送速度)の3過程で特徴を示し,次の4群に大別された.[I]肝細胞膜透過性,胆汁中移行性は高く,肝内蓄積性は比較的低い[iotroxic acid(1),iodipamic acid(2),iodoxamic acid(3),ioglycamic acid(4)],[II]肝細胞膜透過性は低く,胆汁中に殆ど排泄されない(diatrizoic acid,metrizamide],[III]肝細胞膜透過性・肝臓内蓄積性は最も高いが胆汁中移行性は低い[iopodic acid],[IV]胆汁中移行性を示すが肝細胞膜透過性は低い[Z.K.73 215].第I群の造影剤はいずれもtriiodobenzoateの二量体で,相互の差は架橋構造が異るだけだが,肝細胞膜透過性(灌流液からの消失半減期)は(1)≥(2)>(3)>(4),胆汁中への最高移行速度(T<SUB>m</SUB>)は(1)>(2)>(4)>(3)の順であり,胆汁申移行速度の経時変化は,(1)(2)では灌流後20分でT<SUB>m</SUB>に達するが(2)では移行速度は徐々に増加し灌流後50分でT<SUB>m</SUB>に達し,それぞれ個有の移行動態を示した.<I>in vivo</I>では(1)は最も速かに高いT<SUB>m</SUB>を示した,(3)は(1)とほぼ等しいT<SUB>m</SUB>値を示したが高用量ではT<SUB>m</SUB>に達する時間は遅延した.(2)では(1),(3)に比べてT<SUB>m</SUB>値は低く排泄は遅延した.灌流肝臓では造影剤灌流前の胆汁流量が<I>in vivo</I>より低いために排泄速度は<I>in vivo</I>より低いが,胆汁中造影剤濃度,排泄の経時変化,造影剤の浸透圧性利胆作用には,両実験系で殆ど差は見られなかった.また両実験系における(2)と(3)の移行動態の相違は,灌流肝臓でみられた(2),(3)の動態学的特徴に加えて,血液蛋臼との結合性における相違を考慮することで説明された.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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