経口血糖降下薬GliclazideとTolbutamideの心臓血管系におよぼす影響
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概要
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新しく開発されたsulfonylurea誘導体(SU誘導体)であるgliclazide(GC)の心臓作用について,tolbutamide(TB)と比較しながら種々の検討を試み,次の結果を得た.1)家兎に対する両SU誘導体の血糖降下作用を比較した.GCはTBより強い血糖降下作用を示した.2)家兎,ラットに両SU誘導体を1〜50mg/kgの範囲で静注し血圧と心拍数の変化を測定した.血圧では一過性のdose-dependentな上昇が見られ,心拍数では大量投与で抑制された.3)家兎,ラット,モルモット摘出心房標本の運動張力および律動数に対する両SU誘導体の影響を検討した.両SU誘導体はこれらの摘出心房の収縮張力を増強させた.律動数は低濃度で変化が見られず,高濃度で抑制きれた.4)家兎摘出心房標本における両SU誘導体のpositive inotropic actionに対するpropranololおよびtheophyllineの影響を調べた.両薬物による有意な影響は認められなかった.5)家兎,モルモット摘出心房標本におけるisoproterenolのpositive inotropic actionに対する,両SU誘導体の影響を調べた.SU誘導体による有意な影響は認められなかった.6)家兎摘出潅流心臓標本における両SU誘導体の冠血流量と,心収縮張力におよぼす影響を検討した.冠血流量はわずかではあるが有意に減少し,心収縮張力は増強された.以上の結果より,両SU誘導体は家兎,ラット,モルモット摘出心房に対してpositive intropic actionを示し,それらはcyclic AMP systemを介するものでも,adrenergic mechanismによるものでもないと考えられる.また,家兎摘出潅流心臓標本における両SU誘導体による冠状血管の収縮と,positive inotropic actionによる酸素消費量の増加との関連から,SU誘導体が心筋の虚血状態を招く可能性も考えられるが,著者らの実験は摘出心における急性心臓作用について行なったものであるので,直ちにこの結果を臨床的に問題となっているSU誘導体の心臓毒性に結びつけるにはいたらないと考えられる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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前川 寛
愛知医大
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山本 順之祐
名古屋保健衛生大薬理
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前川 寛
名古屋保健衛生大薬理
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関谷 淳
名古屋保健衛生大薬理
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関谷 淳
名古屋保健衛生大医
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加藤 淑子
名古屋保健衛生大学医学部薬理学教室
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山本 順之祐
名古屋保健衛生大医
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前川 寛
名古屋保健衛生大学医学部薬理学教室
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関谷 淳
名古屋保健衛生大学医学部薬理学教室
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