アデノシンはサイトカイン産生を抑制して肝虚血再灌流障害を軽減する
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概要
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アデノシンがA<SUB>2</SUB>受容体を介して活性化白血球抑制作用を発揮し、ラットの肝虚血再灌流障害を軽減する可能性について、アデノシンおよび選択的A<SUB>2A</SUB>受容体刺激剤であるYT-146を用いて検討を行った。formylmethionyl-leucyl-phenylalanineでヒト好中球を刺激した際に認められる好中球エラスターゼの放出に対して、アデノシンおよびYT-146は0.1、1、または10μMで濃度依存的に有意に阻害したが、その阻害は35%であった。一方、A<SUB>2A</SUB>受容体の選択的拮抗剤であるZM241385は、コントロールの2倍以上にエラスターゼ放出を促進した。ヒト単球をエンドトキシンで刺激した際に認められるTNF-α産生を、アデノシンおよびYT-146は0.1、1、または10μMで濃度依存的に有意に阻害し、その最大阻害は50%であった。ZM241385は、TNF-α産生に影響は与えなかった。ラットの肝中葉および左葉を60分間虚血後、再灌流すると血中GOT·GPT活性は12時間目に最大値を示した。アデノシンおよびYT-146は濃度依存的にこの血中GOT·GPT活性の上昇を抑制したが、ZM241385はこの上昇に影響を与えなかった。肝虚血再灌流によりひき起こされる肝のTNF-α濃度、cytokine-induced neutrophil chemoattractant(CINC)濃度、およびミ***ペルオキシダーゼ(MPO)活性の上昇は、アデノシンおよびYT-146により用量依存的に抑制されたが、これらの上昇はZM241385投与では抑制されなかった。以上の結果から、アデノシンはA<SUB>2A</SUB>受容体を介して、おもに肝TNF-α産生を抑制することで、肝虚血再灌流障害を軽減する可能性が示された。
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
-
岡嶋 研二
名古屋市立大学大学院医学研究科生体防御学分野
-
岡嶋 研二
熊本大学医学部臨床検査医学
-
原田 直明
福岡大学医学部救命救急医学
-
桂木 猛
福岡大学医学部薬理学教室
-
桂木 猛
福岡大学医学部薬理学
-
岡嶋 研二
熊本大学医学部
-
原田 直明
名古屋市立大学大学院医学研究科展開医科学分野
-
岡嶋 研二
熊本大学医学部臨床検査医学教室
-
原田 直明
福岡大学医学部薬理学教室
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