オートクリン/パラクリン分子としてのATPの放出機構
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概要
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近年,ATPのオートクリン/パラクリンシグナルとしての放出のメカニズムを探る研究が欧米を中心に盛んに行われているが,未だ,諸説入り乱れた状態で明確な結論を得るに至っていない.これについては,多彩な研究のアプローチが見られるが,これは以下に示すように大きく4つに分けられるようである.(1)先ず,ATP結合カセットであるCFTRの活性化がCl−チャネルの開口と,ATP放出を引き起こすという説であるが,これを否定する報告も多く,その論争は現在も続けられている.(2)これに関連して,赤血球のデフォルメーションの結果,CFTRの活性化によってATPが放出されるという一連の報告もある.(3)グリア細胞や種々の株細胞から機械的刺激などによるInsP3産生増加がヘミチャネルを介してATPを放出する.このATPがパラクリンとしてP2Y受容体を刺激して,InsP3とCa2+の細胞内増加を引き起こし,この繰り返しにより,Ca2+波が伝播するという考え方もある.(4)平滑筋などでInsP3産生を促す神経伝達物質(ATPを含む)やペプチド類による受容体刺激でATP放出が見られるが,InsP3産生以降の放出機構は現在不明である.このように用いる細胞や刺激の種類によってATPの放出には様々なメカニズムの存在が示唆され,今後の研究のさらなる進展が待たれる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2004-06-01
著者
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