牛毛ケラチンに対する単クローン抗体の作製およびその特性
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概要
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牛毛低イオウ含有(LS)画分を抗原として,単クローン抗体を作製し,その生化学的,免疫組織化学的特性について検討した.牛毛のチオグリコール酸による可溶化生成物にについて,モノヨード酢酸によるカルボキシメチル化を施し,抗原として用いた.得られた単クローン抗体(1704G)は,ELISA,ウェスタンブロッティングにより,牛毛高イオウ含有(HS)画分とは全く交差反応を認めず,LS画分の70kd, 60kd, 50kdおよび45kdポリペプチドのうち,60kd, 50kdおよび45kdに反応したが,70kdに対する反応は認められなかった.さらに,PAP法を用いた免疫組織化学的検索により,この抗体は毛小皮,毛皮質および毛髄質と外根鞘の細胞質にのみ特異的に反応し,他の腺上皮あるいは表皮細胞における陽性所見は全く認められなかった、毛小皮と毛皮質における反応性は,その角化層に移行するに従い減弱することから,この抗体の認識するエピトープは角化により遮へいされると考えられた.一方,外根鞘細胞における陽性反応は毛包深部では強く検出されたが,表皮にに近づくにつれ減弱した.この反応の減弱は外根鞘の非角化領域で観察されるため,角化によるエピトープの遮へいとは無関係であると考えられた.この結果から,外根鞘細胞は毛包深部では毛を構成するケラチンと同一のエピトープを含むサイトケラチンを細胞骨格として発現するが,その上部では,この抗体で認識されない別のサイトケラチンを細胞骨格として発現することが示唆された,また,毛母基細胞に対するこの抗体の反応性は確認されず,髄質細胞,皮質細胞および毛小皮細胞に分化すると同時に陽性反応を認めることから,この抗体は毛を形成する細胞の分化指標として有用であると考えられた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
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新井 克彦
東京農工大学農学部硬蛋白研
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新井 克彦
東京農工大学 農
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上原 孝吉
東京農工大学農学部硬蛋白研
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上原 孝吉
東京農工大学農学部硬蚕白研究施設
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松永 あや子
東京農工大農・硬たん白質利用研施設
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上原 孝吉
東京農工大学農学部
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