牛乳および乳製品の無機塩類に関する研究 : VIII. コバルト含量
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概要
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日本の牛乳の無機質に関する一連の研究において,第15番目の元素として,Coの定量を行なつた.試料は,1961年3月から2年間に採取した市乳120,合乳93および個体乳84例である.これらを500〜550°Cで灰化して用いた.Coの定量には,簡便で回収率が安定しているニトロソR塩法を選んだ.その結果,灰分1g当たりのCo量μgは,市乳で0.0592±0.0196(市乳100g当たり0.0414),合乳で0.0687±0.0260(同,0.0461μg),個体乳で0.0595±0.0229(同,0.0417)であつた.これらの値は,諸外国の文献値より低く,また著者らが外国産の全粉乳において測定した値(0.1690)より著しく低かつた.これは飼料の影響で,わが国の草類のCo量が少ないことや,青草が欠乏する冬から初春にかけて利用されるいねわらに,水溶性Coが少ないことに原因するものと推察した.以上の値から計算すると,牛乳中でB12を構成するCoは,全Coの約1/4に当たる.脱脂粉乳のCo量(外国産が0.0423,国産が0.0519μg/灰1g)は,全脂粉乳より少なかつた.さらに,牛乳を全乳,脱脂乳,ホエー,バターミルクの各区分に分画して比較したところ,バターミルク部にCoが濃縮されることがわかつた.そこで,牛乳中のCoの一部が脂肪球に吸着されて存在し,遠心分離すれば,脂肪球とともにクリーム部に移行すると考えた.季節や地域によるCo量の差を観察したが有意差は認められなかつた.ただし初乳は,常乳の約3倍のCoを合んでいた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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