子牛第一胃粘膜における低級脂肪酸消費におよぼす第一胃内低級脂肪酸組成の影響
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概要
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飼料摂取開始とともに子牛第一胃内における低級脂肪酸(VFA)の産生が増加し,唾液分泌能,第一胃運動,第一胃重量,第一胃容量などの発達にともない,第一胃粘膜におけるVFAの代謝活性が著明に高まることが知られている.その際,第一胃粘膜では酪酸の利用のみが増加することを著者はすでに認めた.いっぽう,成牛第一胃粘膜では,酪酸の利用が最も活発であることが知られている.新生子牛の第一胃粘膜が,その代謝活性発達過程において,いかに第一胃内VFA組成の影響をうけるかを知ることが本実験の目的である.第一胃フィストラ装着の全乳のみで飼育した子牛(ホルスタイン種)12頭を5群に分け,それぞれ,酢酸溶液投与群,プロピオン酸溶液投与群,酪酸溶液投与群,等モル混合溶液投与群,6:3:1混合溶液投与群とした.投与VFA溶液は遊離酸の1.5M溶液をNaOHおよびKOHでpH 6.0に調整したもので,3週令より13週令まで連日2回づつ第一胃フィストラより注入した.実験期間中の注入VFA総量は単一酸投与の場合約70モル,混合酸投与の場合210モルで,週令に応じて投与量を増加した.91日令において頸動脈より放血屠殺し,第一胃粘膜2グラムを各基質200μ molesを含むKrebs-Ringer bicaronate buffer (pH 7.2)とともに38°C,気相O295%+CO2 5%で3時間振盪し,各基質の消費量を求めた.添加基質は酢酸,プロピオン酸,酪酸,あるいは各酸の等モル混合物である.その結果,全子牛の第一胃粘膜において最大の消費量を示したのは酪酸で,次いで,酢酸,プロピオン酸の順であった.第一胃内投与VFAが酢酸のみであっても,あるいはプロピオン酸,酪酸であっても,また,VFA組成が1:1:1であっても,6:3:1であっても,第一胃粘膜では常に酪酸消費優勢の代謝像を示すことから,子牛の初期発育過程において第一胃内発酵のVFAにかなりの組成変化があっても,子牛第一胃粘膜では酪酸の利用が最もよく発達することが実験的に確められた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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