子牛の肝スライスおよび第一胃粘膜における低級脂肪酸消費の発達
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概要
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著者は先に,動静脈差法によって新生子牛の発育にともなう低級脂肪酸の吸収および体利用の発達について検索したが,その際,出生後週令の若い子牛ほど,肝における酢酸の利用度が低く,週令にともない肝での酢酸利用の増すことを知った。また,第一胃静脈血では,酢酸およびプロピオン酸濃度が週令とともに増加するが,酪酸濃度はほとんど増加せず,新生子牛の第一胃内酪酸は成牛において知られているように,第一胃壁よりの吸収に際してほとんど代謝転換をうけるものと考えられた.本実験の目的は新生子牛の肝における低級脂肪酸利用の週令にともなう発達をin vitroにおいて更に追求し,あわせて第一胃粘膜での該物質の利用発達を検索することにある.ホルスタイン種雄子牛20頭(8週離乳,生草あるいは乾草および濃厚飼料自由摂取)を,1,4,8,13,23週令において頸動脈より放血屠殺し,肝スライス500mgあるいは第一胃粘膜2gを,各基質200μ-molesを含むKrebs-Ringer燐酸緩衝液(pH 7.2)とともに38°C,気相酸素下で3時間振盪培養し,各基質の消費量(μ-moles/100mg dry tissue/3hrs)を求めた.添加基質は酢酸,プロピオン酸,酪酸あるいは各酸の等モル混合物である.肝スライスでの酢酸消費は1,4週令においてそれぞれ22.5±0.18,19.1±6.98で変化がみられなかったが,8週令で約2倍の39.0±3.15に著増し,以後23週令までこの高レベルが維持され,出生後間もない子牛肝では酢酸利用のかなり低いことが確認された.プロピオン酸および酪酸の利用もみとめられたが,週令にともなう消費量の著明な増加はみとめられなかった.第一胃粘膜での酢酸およびプロピオン酸消費は週令にともなってほとんど増加せず,1,23週令においてそれぞれ,21.1±1.43,22.3±3.31および19.0±0.05,16.8±2.66であった.第一胃粘膜での利用発達は酪酸についてのみみとめられた.酪酢消費は初期においてかなり低いが(1週令16.8±2.94),週令とともに著増し(4週令30.1±13.76),8週令では1週全の約3.5借に達し(59.7±4.24),以後このレベルが持続され,第一胃粘膜の酪酸利用は8週令までに成牛レベルに達すると認知された.動静脈差法による結果,および本実験の結果から新生子牛第一胃粘膜の酪酸消費は成牛に比してかなり低いが,正常飼育の条件下では,この低活性にもかかわらず,第一胃内酪酸は吸収に際して大部分が代謝転換をうけ第一胃静脈にはほとんど出現しないものと思われる.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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