ビール粕多給による第一胃内繊毛虫の消失と第一胃内条件の変化およびそれらの回復について
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概要
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慣行により飼養中のフィステルを装着した成熟去勢牛の給与飼料TDNを1日10%ずつ段階的にビール粕で置換え,10日目に100%として,5日間それを継続した後,試験第15日に一挙に慣行飼料給与にもどして飼養する,ビール粕多給試験を行なった.この試験中観察された主要な障害と変化はつぎのようであった.1. 残飼は,摂取TDNに対するビール粕TDNが48%に達した第6日にはじめて生じ,その後採食量は不規則に変動しつつ第14日には廃絶した.2. 第一胃液中の繊毛虫は,第10日に突然全く消滅し,第29日まで出現しなかった。再出現後繊毛虫数は指数的に増加し,6日後にもとの水準に復した.3. 消失前,第一胃液にはEntodi-nium属10種と他に4属5種の繊毛虫が観察されたが,消失の前日までにE.dilobumの構成比のみが特異的に著しく増加した.また再出現したのはE.ovinumとE.simplexのみであった.4. 第一胃液のVFA濃度は,第14,15日には1mM/100ml以下に減少し,このときのVFAは酢酸のみで他は検出されなかった.5. 第一胃壁の表層上皮は,第14日には全体が脱落して赤色の糜爛状態となり,第36日にも完全には復元しなかった.6. 一時完全に失われた第一胃の正常な機能がほぼ回復したのは,慣行飼料にもどして後約3週間後であった.7. 養分摂取状況と第一胃および第一胃液の変化,また繊毛虫の消長との相互の関連について考察した.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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