茶樹を加害するキクイムシ類(Ambrosia Beetles)の二,三の生態,特に,根を加害するハンノキキクイムシ(Tea root borer, Xyleborus germanus BLANFORD)と枝を加害するシイノコキクムシ(Tea stem borer, Xyleborus compactus EICHHOFF)について
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概要
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1. ハンノキキクイムシXyleborus gerrnamcsおよびシイノコキクイムシX.conzpactusの雌成虫が材のトンネル内壁に接種するアンブロシア菌を人工培養すると,大部分が菌糸のみ繁殖して,胞子形成はきわめて悪い。胞子形成には雌成虫が分泌する唾液かまたは他の液の含有物質が関係しているものと推定される。しかし,幼虫はアンブロシア菌の菌糸でもよく食べて生育する。現在,入工培養でアンブロシア菌を繁殖させるには,新鮮な材を培地とするのが最もよい。試験管培養では寒天直立培養が菌の繁殖がすぐれ,斜面培養では劣る。またハンノキキクイムシのアンプロシア菌の室内での繁殖適温は23℃内外で,シイノコキクイムシのそれは26℃内外である。<BR>2. ハンノキキクイムシの1世代を通じての飼育法は,三角フラスコによる飼育法がよい。直径1〜1.5cmの根を長さ3cm内外に切り,三角フラスコに入れ,綿栓をして,オートクレブで殺菌する。続いてハンノキキクイムシのアンブロシア菌を接種し,23℃内外で菌を繁殖させる。約10日後,根が菌糸で全面埋没するくらいまで繁殖してから,雌成虫を2〜3頭無殺菌で接種する。アンブロシア菌の菌糸が優勢なので,1世代を終了してもなお虫体附着の雑菌の繁殖を抑制できる。フラスコの外部からでも生育中の経過を大略観察できる。現在連続2世代目の飼育を行なっている。一方ダシイノコキクイムシの三角フラスコによる同様の飼育法を検討中であるが,この飼育はハンノキキクイムシの飼育に比べ,材の新鮮度が重要のようであり,現在のところ不可能である。<BR>3,ハンノキキクイムシは年2回発生で,成虫態で根の中で集団的越冬する。室内飼育での好適温度範囲は21〜23℃で,25℃を越えると斃死個体がふえる。第1世代は5〜6月,第2世代は9月で,7〜8月は雌成虫で越夏する。夏の生息密度が最低となる。10月〜5月の間根の中で数家族の雌成虫が集団で越冬する。<BR>雌成虫は地下30cm内外の深さで,直径1〜1.5Cmの根に好んで穿孔する。1頭の雌の産卵数は約30卵で10卵くらいずつ1ヵ所にかためて産む。雌成虫が根に穿孔後次世代の成虫が出現する期間は30〜49日である。<BR>また,ハンノキキクイムシは時々根以外に枝に穿孔することがあり,秋10月に観察される。<BR>4. シイノコキクイムシは年2回の発生で成虫態で枝の中で越冬する。第1世代は7月〜8月,第2世代は8<BR>月〜9月,枝の穿孔部の周辺に褐色の斑点ができ,これが枝枯症状を現わす。<BR>樹冠面下の直径5〜8mmの小枝に好んで穿孔するが,生息密度の高い時は小枝のみららず地ぎわ部の幹にまで穿孔する。室内飼育の好適温度範囲は25〜27℃で,雌成虫が穿孔後次世代の成虫が始めて出現する期間は,25〜27日である。1頭の雌成虫の産卵数は12〜15卵である。
著者
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