茶樹を加害するキクイムシ類の生態 : I シイノコキクイムシおよびハンノキキクイムシの茶樹殺菌材による飼育とその経過習性について
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概要
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1.茶樹の材を殺菌したものを飼料としてシイノコキクイムシ(Xyleborus compxctus EICHHOFF)およびハンノキキクイムシ(Xyleborus germxnus BLANFORD)を飼育し, これらの経過習性を調べた。2.シイノコキクイムシは25〜26℃恒温下で飼育した場合, 卵から成虫まで17日を要した。すなわち, 卵期間が約5日, 幼虫期間が9日(1令-2日, 2令-3日, 3令-4日)で, 3令から蛹となり, 蛹期間は4日であった。越冬中の雌成虫を殺菌茶技に接種すると, 22日目に最初の成虫が羽化した。雌雄比はほぼ3 : 2,1頭当たりの産卵数は14〜16粒であった。3.ハンノキキクイムシは24℃恒温下で飼育すると, 卵から成虫まで15日を要した。すなわち, 卵期間が3日幼虫期間が7日(1令-2日, 2令-2日, 3令-3日)で, 3令から蛹化し, 蛹期間は5日であった。雌雄比は第1世代成虫で9 : 1,第2世代成虫で8 : 1であった。4.ハンノキキクイムシの生育虫数は, 殺菌根を飼料とした場合は61.4頭で、殺菌枝を飼料とした場合には40.8頭であった。てれは根の水分含量が枝より高くアンブロシヤ菌のはんしょくが旺盛であるためと考えられる。5.ハンノキキクイムシの雌成虫1頭当たりの産卵数は33〜50粒と考えられた。この雌成虫は, 材の太さ, 孔道の大きさ, およびアンブロシヤ菌のはんしょくの良否によって産卵数を調節しているようである。6.ハンノキキクイムシについてoutbreedingとinbreedingの次世代におよぼす影響をしらべたところ, 生育虫数においては, これら両者間にほとんど差異は認められなかった。7.ハンノキキクイムシの殺菌材による累代飼育の結果では, 第1〜2世代とも生育は順調であったが, 第3世代ではアンブロシヤ菌のはんしょくが, きわめて悪かった。しかし, 第3世代を生鮮根で飼育するとアンブロシヤ菌のはんしょくは順調であった。すなわち, 殺菌材による累代飼育では, 何らかの物質不足によって雌成虫が不活性化されるようである。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1965-09-25
著者
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