甘藷汁液蛋白質の栄養価
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
甘藷から脱汁方式により殿粉を製造する際,最初に分離される汁液より蛋白質(汁液蛋白質)を調製し,その化学的性質および栄養価をしらべ次の結果を得た.1. 汁液蛋白質試料は約50%の蛋白質を含み,そのアミノ酸組成を鶏卵蛋白質のアミノ酸に比較するとメチオニンが第一制限アミノ酸で,つづいてリジンが少なかった.2. 汁液蛋白質は約8%前後の粗脂肪を含みリノール酸が全脂肪酸の45%に達し,パルミチン酸が次に多く35%を占めていた.また,アゼライン酸などは認められず脂肪酸の酸化分解はほとんどないものと考えられた.3. 汁液蛋白質は緑褐色あるいは暗緑色に着色し,収クペクトルから推察して,クロロゲン酸類の酸化重合物が吸着あるいは結合しているものと考えられた.同じく吸収スペクトルから汁液蛋白質には核酸が含まれることが推察された.4. 白ネズミに対する汁液蛋白質の蛋白効率は1.9で植物蛋白質としては良好であるが,メチオニンおよびリジンを補足した場合はメチオニンを補足した大豆蛋白質の蛋白効率に匹敵した値を示した.5. 白ネズミで測定した汁液蛋白質の消化率は79%〜83%でやや低いが生物価は72%〜75%で,ほぼ大豆蛋白質の生物価に等しかった.また,製造の際の乾燥方法の種類による汁液蛋白質の栄養価の差異はほとんどないかきわめて小さかった.以上の結果から,甘藷汁液蛋白質は植物蛋白質として良好な栄養価を有し,家畜の蛋白質資源として充分利用し得るものと認められる.
著者
関連論文
- 蒸煮爆砕したスギ(Cryptomerica japonica D. Don)材のリグニン及びリグニン-糖質複合体の性質のアシル化による検討
- 甘藷汁液蛋白質の栄養価
- 草類蛋白質の栄養価(第12報) : 単離蛋白質の消化率について
- 粉末状蛋白質と酸化リノール酸エチルとの反応ならびに反応蛋白質の栄養価について
- 水系において酸化リノール酸エチルと反応させた蛋白質の栄養価
- 草類蛋白質の栄養価(第17報) : ラジノクローバーおよびレッドクローバーの葉蛋白質の生物価
- 草類蛋白質の栄養価(第13報) : 赤クローバー葉のフェノール化合物およびそれの蛋白質の消化率におよぼす影響
- 草類蛋白質の栄養価-10-