日本産絶滅危惧種鳥類のミトコンドリア・ゲノム・プロジェクト2 : アカオネッタイチョウRed-tailed Tropicbird (Phaethon rubricauda)
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概要
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山階鳥類研究所が推進してきたミトコンドリア・ゲノム・プロジェクトの目的は, 日本に生息する絶滅危惧種鳥類のミトコンドリアゲノム全塩基配列を決定し, 将来必要となった時, その配列を用いて集団内での遺伝的多様性を解析できるようにすることである。その時点で明らかにされる遺伝的多様性のデータは絶滅危惧種鳥類の保護や保全に役立つことが期待される。その第2段として, アカオネッタイチョウRed-tailed Tropicbird (Phaethon rubricauda) のミトコンドリア全塩基配列17,777bpの決定について報告する。アカオネッタイチョウは, ペリカン目ネッタイチョウ科に属する中型の海鳥であり, 全体の羽根は白色であるが, 吹き流しのような30cm以上の赤色の2枚の尾羽が特徴的である。南鳥島, 火山列島, 小笠原諸島西ノ島などで繁殖記録がある。2002年に発表された環境省日本版レッドデータブックによれば絶滅危惧IB類“EN (Endangered)” に分類されている。アカオネッタイチョウのミトコンドリアゲノムは猛禽類を除く鳥類に一般的な構造であり, 2個のrRNA遺伝子と13個のタンパク質遺伝子と22個のtRNA遺伝子が同定された。特徴的なのはコントロール領域の長さである。3つのドメインで構成され, その中に鳥類共通のコンセンサス配列が存在する点は他の鳥類のものと同様であるが, ドメインIIIの後半に長い繰り返し配列が存在する。この1,218bpに及ぶ繰返し配列は, 61bpの3回繰返しと, 78bpの11.8回繰返しからなっており, コントロール領域の約半分を占めている。チトクロームb 遺伝子の塩基配列を用いて他の12種の近縁種との系統解析を行った。ML法による解析結果は, ネッタイチョウとグンカンドリが他のペリカン目鳥類と異なるグループを形成することを示唆した。したがって, この両科がペリカン目には属さないのではないかというKennedy & Spencer (2004) の推論を支持する結果が得られた。
著者
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山本 義弘
兵庫医科大学先端医学研究所 家族性腫瘍 部門
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山岸 哲
大阪市立大学理学部生物学教室
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山岸 哲
京都大学大学院理学研究科
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柿澤 亮三
財団法人山階鳥類研究所
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山岸 哲
財団法人山階鳥類研究所
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