ニッポンシロシンクイ(新称)の再発見とモモシンクイガの合成性フェロモントラップに誘殺されるシンクイガ類(鱗翅目:シンクイガ科)
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概要
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1. モモシンクイガCarposina sasakii Matsumuraの合成性フェロモンの成分別誘殺数は多い順に,主成分(Z)-13-eicosen-10-one,主成分+微量成分(Z)-12-nonadecen-9-one(混合比率20 : 1),微量成分となった.実用的には主成分だけで誘引性は充分であるとした白崎ら(1979)とHan et al.(2000)の結果と一致するものであった.2. 1886年よりも後に確実な記録がなかったニッポンシロシンクイ(新称)Carposina niponensis Walsinghamが,和歌山県と大分県に設置したモモシンクイガのフェロモントラップに誘殺されることが判明した.本種はモモシンクイガと外部表徴で類似しているが,雄交尾器による識別は容易である.誘殺データから成虫の発生は9月下旬〜10月上旬であることが示唆され,モモシンクイガの発生時期6〜9月とは異なることが推察された.3. モモシンクイガのフェロモントラップには他に,コウスグロシンクイCarposina maritima Ponomarenko,コブシロシンクイMeridarchis excisa (Walsingham),オオモンシロシンクイM. jumboa Kawabe,チャモンシンクイPeragrachis syncolleta (Meyrick),シロモンクロシンクイCommatarcha palaeosema Meyrickも誘殺されることが判明した.中でも,コブシロシンクイ,オオモンシロシンクイとチャモンシンクイはモモシンクイガと外部表徴が類似しており,誘殺時期もモモシンクイガと重なるため注意が必要である.いずれの種も雄交尾器による識別は容易である.4. モモシンクイガの種小名として,sasakii Matsumura, 1900よりも早く公表されたpersicana Matsumura, 1897の存在が明らかになった.しかし,現在広く使用されている種小名の変更は,本種が果樹の重要害虫であることから応用分野で無用の混乱を引き起こすだけある.このため,モモシンクイガの種小名はsasakii Matsumuraが擁護され,persicana Matsumuraは遺失名となるように,国際動物命名規約の条23.9.3と条81により動物命名法国際審議会に裁定を付託する必要がある.5. 今まで,モモシンクイガの種小名sasakii Matsumura, 1900の新参異名とされていた,persicana Sasaki, 1905は同規約条57.2によりpersicana Matsumura, 1897の一次同名となり,新参であるpersicana Sasakiは永久に無効となる.
著者
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那須 義次
大阪府病害虫防除所
-
吉松 慎一
農業環境技術研究所
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玉嶋 勝範
大分県農林水産研究センター安全農業研究所
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柴尾 学
大阪府環境農林水産総合研究所
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内藤 尚之
信越化学工業株式会社
-
内藤 尚之
信越化学工業
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