膵島β細胞癌、消化器型リンパ腫、甲状腺腫瘍を併発した犬の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ビーグル犬、未避妊雌、15歳が、皮膚扁平上皮癌の検診で来院した。空腹時低血糖を認めたため、各種検査を行い、インスリノーマと診断し、膵臓部分切除を行った。術前に右甲状腺に1.8×1.8cmの腫瘤を認めたため、細胞診を行い、甲状腺腫瘍の併発と診断した。術中胃幽門部小弯側の小腫瘤を同時に認めたために切除した。病理検査結果は、膵臓はインスリノーマ(中悪性度)で、胃は消化器型リンパ腫であった。術後、高インスリン血症による低血糖が持続していたため、プレドニゾロンを使用した。消化器型リンパ腫に対する化学療法としてアドリアマイシンを選択した。リンパ腫は完全寛解が維持されており、甲状腺腫瘍はN/C であり第231病日、計7回にてアドリアマイシンを終了した。総投与量は151 mg/m2であった。第255病日、呼吸状態の悪化にて来院し、心機能の低下および肺水腫が認められたため入院治療を行ったが、第262病日に斃死した。本症例は術前に綿密な全身スクリーニング検査を行うことにより、重複癌を発見することができた。重複癌に遭遇した場合、各腫瘍の進行度、挙動、全身状態を考慮し、治療法を決定する必要がある。インスリノーマ、消化器型リンパ腫の重複癌および甲状腺腫瘍を併発した稀な症例であったが、斃死までの約9ヶ月間、非常に良好なQOLを維持することができた。
著者
-
圓尾 拓也
Veterinary Teaching Hospital, Azabu University, School of Veterinary Medicine
-
信田 卓男
Veterinary Teaching Hospital, Azabu University
-
福田 真平
Aichi dog and cat medical center
-
古川 敬之
Aichi Dog and Cat Medical Center
-
林 佐知
Aichi Dog and Cat Medical Center
-
細川 昭雄
Aichi Dog and Cat Medical Center
-
杉浦 久裕
Aichi Dog and Cat Medical Center
-
圓尾 拓也
Veterinary Teaching Hospital, Azabu University
関連論文
- 膵島β細胞癌、消化器型リンパ腫、甲状腺腫瘍を併発した犬の1例
- イヌ興奮性アミノ酸輸送体5のクローニングと初代レンズ上皮細胞での検出
- 犬の鼻腔腫瘍疾患と非腫瘍疾患の鑑別におけるCT画像の有用性について
- イヌの上顎および下顎に発生した高分化型線維肉腫に対する局所療法: 31cases(1998-2007)
- 腰下リンパ節腫大による排便困難に対して恥骨坐骨切除術を実施した犬の1例
- 術後の補助的化学療法として低用量シスプラチン療法を行った犬の悪性腫瘍16例
- イヌの両側性甲状腺癌に対して片側切除を実施した8例
- 犬リンパ腫107例におけるL-アスパラギナーゼとプレドニゾロンの初期導入による反応の検討
- 前立腺癌に対して緩和的尿道ステント術を行った犬の1例
- 抜歯により病期が進行したと考えられるイヌの口腔扁平上皮癌の2例
- 肺指症候群の猫5例の臨床所見
- 犬の骨肉腫に対する低用量化学療法の効果
- 気管腫瘍により呼吸困難を呈した猫に対し内視鏡下部分切除および気管ステント術を行った1例
- Primary Lung Carcinoma with Paraneoplastic Leukocytosis in a Dog