袋山沢試験流域のスギ・ヒノキ壮齢林における樹冠通過雨量、樹幹流下量、樹冠遮断量
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
東京大学大学院附属千葉演習林の袋山沢試験流域のスギ・ヒノキ壮齢林において、樹冠通過雨量と樹幹流下量の研究をおこなった。その結果、スギ林の一雨降水量(P)と樹冠通過雨量(f)の関係はf=0.877P-2.443で、またヒノキ林ではf=0.825P-2.178で表すことができた。全観測期間の総降水量に対するfの割合はスギ林で79%、ヒノキ林で74%であった。また、同じ試験地で行われた単木の樹幹流下量の研究成果を考慮して、一雨降水量と上層木の樹幹流下量(Sf)の平均的な関係を推定した結果、スギ林でSf=0.064P‐0.447、ヒノキ林ではSf=0.114‐0.798という関係式が得られた。また、Sfの全期間の総降水量に対する割合は、スギ林で5%、ヒノキ林で10%であった。これらのfとSfの集計の結果、6ヶ月ないしは1年間の降水量に対する樹冠遮断量の割合は、通常、スギ林において17%前後、ヒノキ林において16-18%前後であった。本報で得られたfやSfの値や回帰式の係数は、スギ・ヒノキ林や他の針葉樹で得られている既往の報告値と比較され、スギ・ヒノキ壮齢林におけるfやSfの特徴を整理することができた。また、スギ・ヒノキ両林分の下層木の樹幹流下量を調べたが、それらは降水量の1%未満であることがわかった。これらは従来の研究結果と比較され、滋賀県のヒノキ・アカマツ混交林やボルネオの低地熱帯林の下層木の樹幹流下量の特性と比較された。さらに、下層木による樹冠遮断量の算定を試みたが、これらの降水量に対する割合は多く見積もっても、スギ林で0.3%程度、ヒノキ林で1.2%程度の微小な量であり、本報の観測システムで正確に検知できていたかどうかについて再検討する必要性が示された。いずれにせよ、本報の観測対象としたスギ・ヒノキ壮齢林の樹冠における降水の配分過程に対する下層木の影響は、非常に小さいことが確認された。
著者
関連論文
- Development of Allozyme Markers in Abies firma
- 雑草木の刈り払い方法が植栽木の成長に与える影響
- 袋山沢試験流域のスギ・ヒノキ壮齢林における樹冠通過雨量、樹幹流下量、樹冠遮断量
- スギ高齢林の成育に関する研究(1) : 清澄地域におけるスギ高齢人工林の成立過程
- ヒメコマツ更新地の林分構造と林床の光環境
- Allozyme Variation in Natural Populations of Abies firma in University Forest in Chiba, University Forests,The University of Tokyo and in and around the Kanto Area
- 房総半島産ヒメコマツの保全活動
- 伐採と防鹿柵の設置が広葉樹二次林のリター・土砂移動量に与える短期的影響
- 千葉演習林におけるマツ材線虫病に対する抵抗性選抜育種--新たな選抜と採種園産苗木の再検定
- 袋山沢試験流域のスギ・ヒノキ壮齢林における樹冠通過雨量、樹幹流下量、樹冠遮断量
- モミのアロザイムマーカーの開発
- 北海道中央部における導入針葉樹9種の50年後の生育と適応性(会員研究発表論文)
- 森林内におけるハンディGNSS受信機の測位精度(会員研究発表論文)
- 東京大学千葉演習林および関東周辺におけるモミ天然林のアロザイム変異
- Influence of the weeding method on the growth of planted trees
- モチノキの性転換と性比
- 房総半島産ヒメコマツのさし木による増殖
- 房総半島産ヒメコマツの苗木生産