スギ高齢林の成育に関する研究(1) : 清澄地域におけるスギ高齢人工林の成立過程
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概要
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戦後に造林された人工林は成熟期を迎えつつあるが,近年の林業経営活動の停滞により伐採が手控えられ,長伐期化の傾向にある。しかし高齢人工林の適切な取り扱いに関する指針が確立しているとは言い難い。そこで本論では東京大学千葉演習林およびその周辺に残るスギ高齢林分の植林経過とこれまでの生育状況を明らかにし,適切な管理指針を導くことを目的に,高齢林分に関するさまざまな文献や調査資料を分析した。その結果,高齢林では樹幹に腐朽やこぶ,曲がりなど材質に関わる欠点が次第に増加するとともに,長期間のうちに気象被害にあう確率も高まり,林分の健全性が低下する傾向がうかがわれた。また高齢林の成長経過を林分収穫表と比較した結果,高齢で立木密度が大幅に低下し,かなり疎な状態で管理されていたが,それでも年ha当たり材積成長量は10m3を越えていた。このことから,健全性の低下した林木を中心に比較的弱い利用間伐を概ね15年間隔で繰り返しながら,ha当たり蓄積を約1,000m3程度の水準で保つことが高齢林を健全に維持し,かつ材積成長量を確保していくためには有効であることが示唆された。A large area of plantation forests were established after the war and are now maturing, but many of them are not harvested due to the stagnation in the forestry sector. The cutting age is thus prolonged. However, operational management guidelines for old plantation stands are not yet established. The authors of this paper gathered and analyzed various growth records and documents of old sugi stands in the Kiyosumi area in the Boso Peninsula, for the purpose of clarifying the history of planting and growth conditions of old forests and also for developing operational management guidelines. Through the analysis, it was shown that the soundness of old plantation stands declined with time because forests were likely to suffer from wood quality degradation and climate damage. The growth trends of old sugi plantations were also analyzed by comparing with yield tables. It was found that the stand density was rather low but the stand volume per hectare still grew by more than 10m3 per year. These results suggested that old plantation stands should be weakly thinned repeatedly with approximately 15 year intervals to eliminate damaged trees and to maintain both soundness and high volume growth.
- 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林,The Tokyo University Forests,東京大学大学院農学生命科学研究科附属科学の森教育研究センター千葉演習林,東京大学大学院農学生命科学研究科森林科学専攻,新潟大学農学部生産環境科学科,University Forest in Chiba, University Forests, Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyo,Departmの論文
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