紙魚想考(三)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
一九七六年、東京都八王子市に所在する国指定史跡八王子城跡内に建設される吏京造形大学構内学生会館用地について発掘調査が実施された。結果、八王子城に関係する遺構、遺物の発見はなく、大正年間以降この地に居住した志村家の遺構が検出されたに留った。この志村家関係遺構中、注目される二つの遺構がある。一は、志村家奥座敷下から見出された、「胞衣埋納施設」がそれである。扁平な板石下に四八×三四センチの楕円形の粗雑に掘られた穴があり、その中に同形同大の二個の素焼の鉢(皿)形土器を合せ口にして重ねて埋納した施設である。蓋の割目から流入した土砂が堆積していたが内部からかなり磨り減った墨一片が発見された。この合せ口の土器は、底面が小さく口縁にむかって直線的に大きく開く形をとり、赤褐色を呈し胎土に多くの砂粒を含み、内底に「壽」字を刻印する鉢(皿)形土器である。その二は志村家の畑地であった地から発掘された同様な遺構である。上部が削平され遺存状況は悪く、僅か合せ口の二枚の鉢(皿) 形土器を検出したにとどまる。土器は規矩に僅かの大小を見るが同形であり薄手で口唇部を平らに作り底面が広く上げ底となっている。内底に「壽」字を刻印するが、前者が陰印であるのに対し、後者は円内に陽印され、文字も大きいといった特徴が指摘される。
著者
関連論文
- 池尻古墳群の群構造とその性格
- 紙魚想考(三)
- エッセイ 考古学への誘い(9)亀形水盤と斉明天皇の宮殿
- 犬字奉書の呪的環境
- Book Review 今なお息づく東アジア世界の「呪的環境」を再発見--大形徹・坂出祥伸・頼富本宏編『道教的密教的辟邪呪物の調査・研究』
- 井戸の風景・アラカルト (特集 井戸の考古学と民俗)
- 石馬・石人一九州・淀江・畿内を結ぶもの
- 考古学から見た三世紀の倭国 : 最新邪馬台国大和説
- 天正六年七月廿日 『多聞院日記』の中の一日-話題の背景
- 紙魚想考-5-
- 小児の夜啼きとその呪法
- 想青籬記-4-
- 「女性論」の考古学
- 紙魚想考-2-
- 紙魚想考-1-
- 想蒼籬記-1-
- 屋敷と家屋の安寧に--そのまじなひ世界
- 釘・針うつ呪作--その瞥見録
- 鎮井祭の周辺
- 日本古代琴資料集成(昭和五四年度)
- 井戸をめぐるまじない世界 (特集 井戸の考古学と民俗)
- なぜ縄文時代集落論は必要なのか (日本考古学界の現状(特集))
- 群集墳の諸問題〔第76回考古学談話会記録〕
- まじない札の世界に
- 足と足跡の語るもの--その印象と造形の考古学
- 古代の笑ひに
- 千葉県江原台遺跡発見の人面墨書土器とその世界
- 埴輪弾琴像幻想
- 帰化人の墳墓--滋賀郡における漢人系帰化氏族をめぐって
- 田中日佐夫著「二上山」
- 道成寺の発掘調査 (紀州路の文化財)
- 河内国分寺 (諸国国分寺の発掘調査) -- (最近発掘調査された諸国国分寺-2-)
- 延暦寺西塔堂坊跡群の発掘調査
- やはり邪馬台国は大和だ 女王国が九州にあったとしても (卑弥呼の鏡 三角縁神獣鏡)
- 琴の誕生とその展開
- 考古学への誘い(5)継体天皇と稚野毛二派皇子の墓は
- 考古学への誘い(4)古代寺院に仏教壁画を求めて
- 檜隈坂合陵
- 池田茶臼山古墳調査のころ (特集 堅田直先生追悼号) -- (堅田直先生の思い出)
- 平井尚志先生に『貝塚』108号を (特集 平井尚志先生追悼文集)
- 特別講演概要 『万葉集』を考古学する
- 葬とまじなひ--入棺以前 (共同研究「葬墓制と他界観」)
- 招福・除災--その考古学 (共同研究「古代の祭祀と信仰」本篇)
- 都市開発と文化財の保護 (都市と文化)
- 古墳時代研究と自然科学
- 文化財レポ-ト-102-まじない世界研究の復権
- 文化財レポ-ト-110-もう一つの銅鐸観--細片のよびかけにこたえて
- 先生・奥様--私の想ひの中のひとこま一齣--長く寄り添わせていただいて (追悼 藤澤一夫先生)
- 古代の大阪湾岸開発
- 文化財科学と歴史研究 (特集:文化財科学)
- コメント (長野県与助尾根遺跡の統計学的分析)
- 古墳発生の論理-1-
- 紙魚想考-5-