オオムギの雑種強勢に関する研究
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概要
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自殖性作物のオオムギでは、小穂脱落をはじめ補足遺伝子によって発現する多くの障害が知られている。このような障害の生じない交雑組合せでF1にどの程度のヘテローシスが現れるか、ヘテローシスの発現と品種分布の地域性との関係があるかどうかについて試験を行った。そのため日本の数品種を共通親とし、世界各地の品種との交雑を行った。結果の大要は以下の如くである。1.六条品種(並性)の交雑では、日本、中国及び朝鮮半島の43品種に、日本の六条皮及び裸麦をそれぞれ交雑し、ヘテローシスの程度を調べた。その結果個体当り収量に最も高いヘテローシスを示したのは朝鮮半島の品種で、F1/MPの交雑平均値1.37、最大のヘテローシスを示した組合せはF1/BPが1.45であった。2.二条品種の場合は、世界各地からの78品種の共通親として日本の2品種を交雑したF1156を調査した。トルコやエチオピアの品種との交雑でヘテローシスが高く、個体当り収量に対するヘテローシスの最大値を示した組合せは、F1/BPがそれぞれ1.66と1.45であった。3.日本特有の半矮性品種の場合は34品種を用い、これらに皮及び裸性の渦性2品種を共通親としたF1を調査した。これらの交雑でもヘテローシスが発現し、皮麦×裸麦のF1でヘテローシスが高かった。4.世界各地の二条品種10用いた片面ダイアレル分析の結果、一般組合せ能力の高い品種(エチオピア)や特定組合せ能力の高い品種(フランス)が見いだされた。5.二条オオムギで収量への寄与が最も大きかった形質は、一株穂数であったが、降雨の多い年次に行った試験結果では1000粒重の影響が大であった。これは、過繁茂による登熟歩合の低下が主因と考えられたが、品種により過繁茂でも登熟歩合がほとんど低下しない組合せがあった。In cultivated barley, various hybrid injuries such as brittle rachis and hybrid weakness occur. Therefore, crossing must be done among cultivars to prevent the occurrence of such hybrid injuries. In the present study, we examined the magnitude of the heterosis in the crossings and geographical distribution of barley cultivars concerning heterosis. A few Japanese cultivars were used as the common parent for crossing. (1) In the six-rowed barley, 43 cultivars collected from Japan, China and Korea were crossed with non-uzu covered and naked cultivars, Shiroyo-shigara 2 and Nami-Akashinriki, respectively. The largest magnitude of heterosis in grain yield per plant was obtained in the crossing between the Korean cultivar and one of the Japanese common parents. (2) Heterosis in two-rowed cultivars was investigated using a total of 156 F1S which were cross combinations of cultivars collected from the world with two common male parents, Amagi Nijo and Kawasaigoku. The heterosis was larger larger in the cross combinations with Turkish and Ethiopian cultivars. The largest F1/BP was 1.66 in Turkish and 1.45 in Ethiopian cultivars. (3) As to uzu or semi-dwarf cultivars peculiar to Japan, 34 cultivars were crossed with two common male parents, Sekitori (covered) and Akashinriki (naked). Expression of the heterosis was rather conspicuous in the crosses of covered×naked cultivars than those of covered×covered and naked×naked ones. (4) Half diallel analysis using 10 two-rowed cultivars showed that one Ethiopian cultivar expressed a high grade of general combining ability and that one French cultivar was of higher specific combining ability. (5) The most effective agronomic character of the two-rowed cultivars to the grain yield per piant was number of ears in an ordinary year, while in the wet year it was 1000 grain weight. This was considered to be due to overluxuriant growth accompanied by lowering of the percentage of ripened grain. However, in some cultivars the percentage of ripened grain was not lowered under the overluxuriant growth condition.
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