二・六条品種間交雑による大麦育種に関する研究: I.二条および六条遺伝子の農業形質に及ぼす影響
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概要
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二条×六条の品種間交雑から多収性大麦品種を得ることは困難であると一般にいわれている。この問題を検討するため,条性遺伝子Vvの農業諸形質に及ぼす多面的作用の有無,程度および遺伝的背景との関係について調査した。材料として,日本のビール用大麦品種,キリン直1号と栃木ゴールデンメロンをそれぞれ片親とし,3種の在来大麦品種を交雑し,その雑種のF_2以後FgまでVvヘテロ個体を選抜しつつ自殖を重ねてそれぞれ34対の二・六条同質遺伝子系統対を育成して用いた。このほか,戻し交雑法で作られた2組の同質遺伝子系統も比較試験に用いた。3年にわたり3〜4回の反復試験を行なった結果から次のことが明らかになった。 調査した12の農業形質のすべてに関して,二条と六条系統間に有意差が認められたが,条性遺伝子の影響の強弱およびそれと遺伝的背景との交互作用の大小により,それらは3群にわけられた。条性遺伝子の作用を強くうけるのは1穂粒数,1000粒重,稔実率,穂軸節間数(小穂段数)および穂長で,1穂粒数以外は二条型(VV)の方が対応する六条型(VV)よりも大きい値を示した。条性遺伝子の影響が少なく,主として遺伝的背景の支配をうけるのは出穂期,稗長,穂数,穂密度,程の太さの5形質であった。 粒収量について六条型が二条型よりも平均して若干優れており,また粒の粗蛋白含量については二条型の方が六条型に比し,たいていの系統対で高い値を示した。しかし,この両形質に対しては条性遺伝子と遺伝的背景との交互作用の影響がかなり顕著に認められた。そのため,同質遺伝子系統を戻し交雑法で育成する場合,二条あるいは六条の何れの現品種を反復親に用いるかによって全く逆の結論が導かれることが指摘され,ヘテロ型自殖法により多くの系統対を作り,平均の遺伝的背景の下で遺伝的効果を比較することが有利であることが論ぜられた。 なお,調査した半数以上の形質に対し,二条遺伝子と六条遺伝子は異なる遺伝的背景の下で同じ強さで働くものではなく,二条遺伝子の方が強い影響を与えることが認められた。
- 日本育種学会の論文
- 1975-12-31
著者
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