オオムギ品種における完熟胚および未熟胚由来カルスの再分化能の比較
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概要
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本研究では世界各地のオオムギ132品種を供試して完熟胚と未熟胚からのカルス誘導と再分化能について調査し、材料植物が有する遺伝要素と、外植片の違いが再分化能のどのように関与しているかを考察した。供試品種のほとんどがカルスを形成したが、全くカルスを形成しない品種もあった。エチオピアの品種にはカルス形成の悪いものが多くみられた。完熟胚培養系ならびに未熟胚培養系ともに供試品種によってカルスの増殖量に幅広い変異があり、カルスがほとんど形成されない品種から、著しく増殖する品種まであった。カルスの形態的特徴に関しては、完熟胚培養系ではほとんどの品種が水っぽいカルスを形成したのに対して、未熟胚培養系では品種によって、水っぽいタイプ、硬くしまったタイプ、もろく崩れやすいタイプの3タイプを形成し、両培養系間に大きな差異が認められた。完熟胚培養系の場合、再分化するのはほとんどが不定根であり、不定芽を再分化したのは日本の関東二条5号、ふじ二条および紫麦の3品種だけであった。一方、未熟胚培養系では、21.2%の品種が不定芽を再分化した。不定芽を再分化した品種は朝鮮半島や日本に多く、反対にエチオピアや西南アジアの品種には再分化するものが少なかった。供試品種における不定根の再分化率と不定芽の再分化率の間には相関関係はなかった。(r=0.05)。両培養系の間ではカルス増殖量について相関関係はなく(r=0.07)、不定根の再分化率については低い値ではあるが有意な正の相関があった(r=0.24)。また、未熟胚培養系におけるカルス増殖量と不定芽の再分化率についても相関関係は認められなかった(r=0.14)。二条品種と六条品種の間では、完熟胚培養系の不定根再分化率を除いて差は認められなかった。The callus forming ability and regenerating ability of the calli derived from mature and immature embryos of 132 barley varieties were examined. These materials were taken from a world-wide collection preserved at the Barley Germplasm Center of Okayama University. The callus forming ability varied widely according to genotype in both mature and immature embryos, but the varieties collected from Ethiopia showed low callus forming ability. Calli derived from mature embryos generally did not regenerate shoots, except for three Japanese varieties. The frequency of shoot regeneration from the calli derived from immature embryos was somewhat higher than that from those derived from mature embryos. Many of the Korean and Japanese varieties had a high shoot regenerating ability. However, few of the varieties from Ethiopia and Southwest Asia had a high shoot regenerating ability. No correlation was observed btween root regenerating ability and shoot regenerating ability of the varieties. No correlation was observed between callus proliferation and root regenerating ability between calli derived from mature and immature embryos. We could not find any difference in the shoot regenerating ability btween the two-rowed and six-rowed genotypes.
- 岡山大学資源生物科学研究所の論文
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