保健室におけるアートセラピー的手法の導入に関する開発的研究(第2報) -保健室登校支援のためのアートブック導入の意義と内容の検討-
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概要
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本研究の目的は、保健室登校の生徒数が近年増加傾向にある中で、保健室に来室する児童生徒への支援として自己表現や内省を促すようなアートワークブックを作成することにある。第1報(市来他, 2009)では、養護教諭らに半構造化面接を行い、これまで創作や表現活動を導入した経験を聞き取り、そのメリット、困難性について検討した。本論文では第1報での結果を鑑み、文献研究によって保健室登校の支援の本質的意義とそこでのアートワークブック作成の意味について検討し、2000年1月から2009年8月までにCiNiiに登録されている先行研究および関連図書をレビューして今後のアートワークブックの内容の骨子を構築することを目的とした。保健室登校の支援は教室復帰のみをその最終目的とするのではなく、その過程の中で内省を深め、自己理解や自己指導力を育成する視点が重要である。そのために保健室で養護教諭に受容、共感されながら行う表現、創作活動が自己対象体験となり、自己愛の修復につながると考えた。文献研究の結果、概ね3段階の支援を想定することが有効であり、アートワークブックの内容もこの3段階が反映されるような内容を含む必要があることが示唆された。その内容は、1)子どもと信頼関係を結び、あるがままを受容する時期→こころの居場所への導入に関連した課題 2)自発的な活動に取り組んだり、自己理解や内省が進む時期→自己表現を促進する課題 3)社会化の過程で対人関係の経験を意識していく時期→社会化の過程を支援する課題であり、加えて4)身体感覚の表現と言語化に関する課題の重要性についても検討した。
- 2010-03-31
著者
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