看護師による安全な静脈注射実施に向けた北海道大学病院での取組み : 静脈注射エキスパートナース育成を中心とした教育体制の構築
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
平成14年9月,厚生労働省は「看護師等による静脈注射は診療補助行為の範疇である」と法解釈を変更した。本院は特定機能病院として,高度先端医療を提供しているため,患者は道内の広域から紹介され,抗がん剤等の危険性が高い薬剤を使用する場合が多い。患者の安全を保障したうえでの看護師による静脈注射の実施は,経験年数が3年未満の看護師が約3割を占める中,いかに環境を整備し,静脈注射に係る高度な知識,技術の習得に向けた教育体制を構築するかが鍵であった。厚生労働省通知の医師等との“適切な業務分担”等を踏まえ,病院内に「静脈注射に関する検討委員会」を設置し,施設基準を作成し,看護部委員会で教育体制の構築を図り,平成20年5月から看護師による静脈注射の実施を開始した。本稿では「静脈注射に関する検討委員会」設置に至る組織化までの過程と,集合教育と部署内教育を組み合わせることを方針に,静脈注射エキスパートの育成を中心とした教育体制の構築の実際と今後の課題について述べる。The Ministry of Health, Labour and Welfare in Japan adopted in 2002 a new legal interpretation that stated that nurses were able to practice intravenous infusions under physicians' orders. The Hokkaido University Hospital is an advanced treatment facility that employs state-of-the-art medical technology in its role as the healthcare hub in Hokkaido. There is a high likelihood that patients receiving cancer therapy at this hospital will require high-risk drugs administered by intravenous infusions. However, nurses' infusion safety practices were found to be less than optimal because approximately 30% of nurses had fewer than three years of experience. We therefore aimed to establish an educational system whereby nurses could acquire advanced knowledge and skills pertaining to safe intravenous infusions. Our hospital founded a special committee that reviewed infusions performed by nurses. The committee created facility-wide criteria that have promoted a concrete division of roles among health care professions. A session run by expert nurses resulted in the establishment of a unique system to educate nurses about intravenous infusions. All Nurses began performing the infusions in 2008. This study describes the process underlying the approach of the institution and the committee as well as the expert nurse session that combined special lectures, group work, and unit learning. We also describe possible limitations of the institutional approach and the educational system.
- 2009-03-31
著者
関連論文
- 北海道の産科施設集約による助産師業務についての研究 : 集約した病院に勤務する助産師の意見
- 伝統的母性観の影響下における母親の育児観 : 母親役割期待に関する調査から
- 急性期病棟における患者の病床配置と看護必要度との関連 : 個室・4床室と中央看護拠点までの距離に関する検討
- マンシェット装着動作の分析(第2報) : ゴム嚢の固定に焦点をあてて
- 複数の患者を受け持つ看護管理学実習の展開
- 057 分娩後の腰痛評価方法に関する基礎的研究 : 第2報(Group9 産褥1,一般演題ポスター,第48回日本母性衛生学会総会)
- 056 分娩後の腰痛評価方法に関する基礎的研究 : 第1報(Group9 産褥1,一般演題ポスター,第48回日本母性衛生学会総会)
- 産褥期の腰痛に関する研究
- 基礎看護学領域での取り組み--安全を意識できる感性を育む学習 (特集 医療安全をつくる教育と研修) -- (PART3 医療安全をつくる教育と研修-基礎教育編)
- 看護師による安全な静脈注射実施に向けた北海道大学病院での取組み : 静脈注射エキスパートナース育成を中心とした教育体制の構築
- 助産婦のメンタルヘルスに影響すると考えられる要因の実態調査 : 専攻科修了生のアンケート調査を通して
- マンシェット装着動作の分析(第1報)
- 看護過程の理論的枠組みと実践の統合を目指した帰納的教授方略の効果
- O-173 医療安全と新人教育に関する先輩助産師への面接調査(Group33 助産師・保健師3,一般口演,第51回日本母性衛生学会総会)
- 分娩介助における内診 (第37回医事法学会総会 研究大会記録) -- (ワークショップ)
- 終末期の40歳代肺がん患者の意思を尊重した援助--呼吸困難感を増悪させながらも自ら行動することを望んだ事例
- 判決紹介 医師が褥瘡の患者に対し適切な栄養管理及び感染症対策を怠ったことの義務違反と、喀痰による患者の窒息死との間に因果関係は認められないが、死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性があるとして損害賠償請求が認められた事例[東京地八王子支判平成17.1.31]
- 判決紹介 抗生剤の点滴によるアナフィラキシーショック死における医師の看護師への指示等の過失を認定した事例(最判平成16.9.7)
- 無資格者である学生がどこまで技術を行えるか--臨地実習で行う看護技術をめぐる法的問題 (特集 臨地実習の看護技術教育--何を,どこまで教えるか) -- (PART 1 臨地実習の看護技術教育への問題提起)
- 判決紹介 助産婦の外回転術による新生児の後遺症(横浜地裁判決平成13.4.26)
- アメリカにおける看護をめぐる法と制度 (第33回医事法学会総会 研究大会記録) -- (シンポジウム/いま、医行為を問い直す--静注、気管挿管、喀痰吸引……)
- 日本語版SDLRSの開発-信頼性と妥当性の検討
- 看護を学ぶことを選択した動機の分析 : 教育課程の異なる2校間での比較
- 体外受精を受けた患者の意識と看護に関する一考察
- 保健婦助産婦看護婦法と医療法にみる看護婦(士)の業務と責任 : 他のコ・メディカル職に関する法律との比較を通して
- 旭川医科大学医学系研究科看護学専攻(修士課程)の設立経緯
- 潜在助産師のための再チャレンジ支援プログラムにおける「実習」の意味--受講生のインタビューの分析から
- 医療過誤と看護師の責任--日米の比較
- 妻の妊娠期における父性性(第2報) : 妊娠前・中期と後期における父性性の変化
- 妻の妊娠期における父性性(第1報) : 父性性を構成する要因
- 看護職管理者が求める助産婦教育課程入学者選抜の方法
- 専攻科助産学特別専攻における入学者選抜方法の現状と課題 : 全国国立医療技術短期大学部専攻科助産学特別専攻と北海道内の3年制看護学校へのアンケート調査から
- 本シンポジウムの趣旨と基本的枠組み (第40回医事法学会総会 研究大会記録) -- (シンポジウム 医療安全とプロフェッション)
- 唄孝一,石川稔編『家族と医療』
- BI-6-2 ドラッグストアと大学を結んだ遠隔健康相談システム実証実験(BI-6. 実例から考える遠隔医療に必要な情報通信技術,依頼シンポジウム,ソサイエティ企画)
- 看護学生による患者情報取り扱いの法的問題と教員に求められる対応 (特集 看護基礎教育における患者情報の取り扱い)
- 中堅看護師が経験した病院内異動の実態 : キャリア試行期と確立期の2事例の検討
- O1-018 助産師の分娩期の助産ケアの困難を克服する過程(母性看護ケアII,一般口演,第52回日本母性衛生学会総会)
- 高度遠隔健康相談システムを用いた薬局における健康相談の臨床実証実験報告(一般演題(口頭)4,地域・在宅医療(1),Enjoy Pharmacists' Lifestyles)
- 嚥下障害のある患者に対する食事時の見守り 第1報 ―参加観察法を用いた実態調査―
- 文献紹介 草刈淳子・見藤隆子・小玉香津子編『2000年に、看護を語る』--急いでしかし着実に責務を果たす時が来た
- 判決紹介 点滴および硬膜外麻酔時の看護婦の過失(大阪地裁判決 平成10.12.2,平成11.3.8)
- 助産婦の資格および業務に関する日米比較 : ウィスコンシン州を参考に
- アメリカにおける看護婦の法的責任(7)看護婦実務法の発展と医療事故判例の分析
- アメリカにおける看護婦の法的責任(6)--看護婦実務法の発展と医療事故判例の分析
- アメリカにおける看護婦の法的責任-5-看護婦実務法の発展と医療事故判例の分析
- アメリカにおける看護婦の法的責任-4-看護婦実務法の発展と医療事故判例の分析(資料)
- アメリカにおける看護婦の法的責任-3-看護婦実務法の発展と医療事故判例の分析(資料)