ヘルスリテラシー研究と図書館情報学分野の関与 : 一般市民向け健康医学情報サービスの基盤として
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概要
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展望論文【目的】 「ヘルスリテラシー (Health Literacy)」 とは, 健康を保つために, あるいは健康を取り戻すために, 必要な情報を得て使いこなすための能力のことである。 それは情報を提供する側も意識すべき能力である。 米国では, 2000年に発行された健康政策指標 Healthy People 2010 でも目標の一つに取り上げられ, 関連する研究が盛んに進められている。本稿は長い歴史のある米国を中心としたヘルスリテラシー研究の発展と, 近年ようやく概念が導入されてきた日本のヘルスリテラシーをめぐる動きを文献レビューによって展望し, 日本におけるヘルスリテラシー研究を進める必要性と, 図書館情報学分野の関与について確認しようとするものである。【成果】 米国のヘルスリテラシー研究の流れとして, 1970年代に始まる文書の可読性 (Readability) についての研究, 1990年代に始まる個人の能力の計測, さらに2000年以降には, 「限られたリテラシー」がもたらす健康指標への影響を測るヘルスアウトカム研究という三つの節目が認められた。 また, ヘルスリテラシー研究モデルの適用によって, 既存研究の手法と成果を①基礎的リテラシーと知識, ②狭義のヘルスリテラシー, ③アウトカムの三つの局面から整理し把握することができた。 研究者の専門分野は幅広く, 図書館情報学分野でも関連研究が見られる。 また, 一般市民向けの「消費者健康情報」には研究成果が活用されている。 一方, 日本では, 概念は一部の保健衛生分野で導入されているものの, ヘルスリテラシー研究はまだ数も種類も少ない。日本でも患者や一般市民による健康医学情報の利用に関心が高まっている。 様々な場での人と情報の双方にかかわる研究分野として, ヘルスリテラシー研究は日本でも注目すべき重要課題である。 医療や健康教育の専門家に加え, 図書館情報学分野もヘルスリテラシー研究の一翼を担うことが望まれる。 Purpose: "Health literacy" is the ability to obtain and use information in order to maintain one's health and to recover from disease. Health information providers should consider health literacy an integral part of health communication. Since "Health Literacy" was one of the objectives of Healthy People 2010 in the year 2000, research in the field of health literacy has flourished in the U.S.This paper attempts to emphasize both the necessity of health literacy research and the outline contribution of library and information science to health literacy in Japan through a literature review of the expansion of health literacy research in the U.S. and its introduction to Japan.Results: There were three turning points in health literacy research in the U.S.: a readability study for documents started in the 1970s; a measurement study of individual health literacy created and implemented in the 1990s; and a health outcome study after the year 2000. These previous studies indicate that the methods and accomplishments of health literacy research are recognized primarily based on the following health literacy research models: basic literacy and knowledge; narrowly-defined health literacy; and health outcomes. The backgrounds of the health literacy researchers vary, but do include library and information science. The results of the research have been reflected in the expansion of consumer health information services. In Japan, very little health literacy research has been conducted, although a portion of the definition of health literacy has been introduced to scholars in some health-related fields.
- 三田図書館・情報学会の論文
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