精神障害者の地域生活支援に関する研究(Ⅰ)—日本とスウェーデンにおける日中活動の場の実態—
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概要
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地域で生活する精神障害者にとって,日中活動の場は雇用に向けた準備の場としての機能に加え,安心できる居場所としての機能をもつことが必要であると考える。本論文では,精神障害者の地域生活支援の社会資源のひとつとして小規模授産施設に働く職員を対象に,施設の運営形態(運営主体,開所時期など),施設の基本的情報(事業収入,利用者数,作業活動など),職員の配置状況(職員数,雇用形態,資格など),自由記述(施設の役割,現在の課題など)からなる調査票を用い,日本の大阪市とスウェーデンのヴァルムランド県にある施設各3ヶ所を対象として調査をおこない,両国における日中活動の場の機能について比較検討をおこなった。結果として以下のことが示された。日本の施設は障害当事者の家族で構成されている家族会を基盤として日中活動が設立され,その後法人格を得てはいるが民間で運営されているのに対して,スウェーデンではすべての施設がコミューンにより運営されていた。また利用者の居住形態では日本の利用者の多くが家族と同居しているのに対し,スウェーデンでは単身生活者の割合が多かった。活動内容においては両国間で大きな違いはなかったが,日本では事業収入の一部が工賃として利用者に支払われるのに対して,スウェーデンでは原則的に事業収入がコミューンに還元されるという違いが見られた。職員が日中活動の場を居場所として,また社会的交流の場として重視している点は両国に共通であった。このように活動内容や職員の意識が共通しているのに対し,日中活動の場を運営する基盤が両国で大きく違うところが特徴であり,とりわけ日本においては日中活動の場を支えるセーフティネットの構築が課題となることが示唆された。For people with mental disabilities living in the community, Day Activity Centers are very important not only as a place of preparation to get jobs but also as a place where they can feel secure. On this article, we investigated to staff members at six different Day Activity Centers(DACs), three in Japan, three in Sweden. These centers are resources for people with mental disabilities. Questionnaires were administered to staff members in both countries, comparing the situation of the DACs for people with mental disabilities in regard to managerial systems. Some of the questions were related to type of body, established date, hours open, registered members, type of work, activities, including information such as number of staff, education, qualifications and other information, free questions concerning role of DAC , their challenges and other situations. Results are following: DACs in Japan were established by families of people with mental disabilities and managed by the private organizations. Conversely, Swedish DACs are established and managed by the municipality(kommun). Majority of people with mental disabilities who attend the DACs in Japan live with their families. In Sweden, the vast majority live alone. These results show that their family-support for people with mental disabilities is much higher in Japan. DACs support the social life of people with mental disabilities in both countries. Most of the support is similar though the management style differs. The greatest difference between DACs in Japan and Sweden is their managerial systems. These problems show that the public safety-net for people with mental disabilities in Japan need to be expanded.
- 2008-09-30
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