スーパープレッシャー気球とゼロプレッシャー気球を組み合わせたタンデム気球の開発 II(大気球研究報告)
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概要
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長時間の飛翔が可能であるスーパープレッシャー気球( SP気球)とゼロプレッシャー気球( ZP気球)からなるタンデム気球システムの開発を 2009年より進めている。 2010年 11月に網をかけた最初の SP気球を製作し、 2011年 4月には直径 3 mの SP気球で耐圧性能 9,600 Paを達成し、気球の製作方法を確立した。その後、 SP気球の大型化を行うと共に、 SP気球の破壊機構の開発、二つの気球を連結した状態で放球する手法の開発を進めた。 2012年 5月には、飛翔用の直径 20 mの SP気球を製作し、地上試験により、展開性能、および、ガスの長時間保持に問題ないことを確認するに至った。 2012年 6月 9日にこの SP気球と、体積 15,000 m3の ZP気球からなるタンデム気球システムの飛翔性能試験を実施した。放球は、 ZP気球に浮力をつけた後、ZP気球とゴンドラの間に入れた SP気球の頭部にガスづめして細長く膨張させる方法により、支障なく実施された。気球は順調に上昇し、 SP気球の内部ガス圧と大気圧との差圧も上昇しながら、高度 29.2 kmで水平浮遊に入った。 SP気球は、400〜 500 Paの差圧が印加された時点で数 cm2の穴が生じたものの、ガスの流出速度が遅かったため、最大差圧は 814 Paに達し、 25分間にわたる水平浮遊時の間は正圧であった。気球が設計形状に展開しており、その直径も予測値と一致することが ITVカメラによる画像データから確認された。本実験によって、はじめてタンデム気球システムの水平浮遊時の高度変動が評価され、高度変動は分布を正規分布で評価した際のσにして 11.2 mにとどまり、単独の ZP気球での飛翔時にくらべ、高度変動が抑圧されることが確認された。飛翔試験の最後には、錘を落とす方式の気球破壊機構を動作させ、地上試験時と同程度のフィルムの引き裂きが行われることを確認した。今後、単独で飛翔させるより大型の SP気球の開発を進めると共に、大気観測を念頭においた小型のタンデム気球の開発を並行して進める所存である。
著者
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松嶋 清穂
藤倉航装株式会社
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斉藤 芳隆
宇宙研
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飯嶋 一征
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部
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斎藤 芳隆
宇宙航空研究開発機 宇宙科学研究本部
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松坂 幸彦
宇宙航空研究開発機 宇宙科学研究本部
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田中 茂樹
藤倉航装株式会社
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梶原 幸治
ナカダ産業株式会社
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島津 繁之
ナカダ産業株式会社
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飯嶋 一征
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所
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