両側の血腫除去術を要した頭部外傷8症例の臨床的検討
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概要
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(はじめに)頭部外傷において、短時間の間に両側の血腫除去術を要する例は稀である。今回我々は受傷後12時間以内に両側の血腫除去術を行った頭部外傷8症例について臨床的検討を行った。(対象)過去10年間に女子医大東医療センターで外傷性頭蓋内血腫除去術を行った168症例のうち、受傷後12時間以内に両側の頭蓋内血腫除去術を行なった8症例(4.8%)を対象とした。(結果)症例の内訳は男性4例、女性4例。受傷機転は交通外傷7例、階段よりの転落1例。交通外傷は全例が歩行者ないしは自転車乗車中、自動車(4例が大型車)と衝突したもので、受傷エネルギーが大きいことがうかがえた。血腫の種類は両側硬膜外血腫が2例、一側硬膜下血腫と対側硬膜外血腫が4例、両側硬膜下血腫が2例だった。また、全例に脳挫傷の合併をみた。来院時意識レベルはGlasgow Coma Scaleで7が1例、6が1例、5が1例、4が2例、3が3例で、全例重症頭部外傷だった。瞳孔異常は、8例中6例(75%)でみた。手術に関しては、当初より両側血腫除去が必要と判断した症例(Simultaneous type)が4例、一側の手術直後のCTで対側血腫の発生や増大が確認され、直ちに対側の血腫除去術を行った症例(Postoperative type)が4例だった。転帰はGlasgow Outcome Scaleで4例がDead、2例がSevere disability、2例がModerate disabilityで,Good recovery症例は存在しなかった。(結語)頭部外傷で両側の頭蓋内血腫除去術を要する症例は極めて重症度が高い。特にSimultaneous typeでは合併する脳実質損傷が強く極めて予後不良であった。Postoperative typeでは迅速な診断・治療により予後が改善する可能性があり、このためには術直後CTが有用と考えられる。
- 2014-02-25
著者
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萩原 信司
東京女子医科大学東医療センター脳神経外科
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糟谷 英俊
東京女子医科大学 脳神経センター 脳神経外科
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笹原 篤
埼玉県済生会栗橋病院脳神経外科
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大渕 英徳
東京女子医科大学東医療センター脳神経外科
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谷 茂
東京女子医科大学
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菊池 麻美
東京女子医科大学東医療センター卒後臨床研修センター
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笹原 篤
東京女子医科大学東医療センター脳神経外科
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吉村 知香
東京女子医科大学東医療センター脳神経外科
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高橋 祐一
東京女子医科大学東医療センター脳神経外科
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横佐古 卓
東京女子医科大学東医療センター脳神経外科
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新井 直幸
東京女子医科大学東医療センター脳神経外科
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黒井 康博
東京女子医科大学東医療センター脳神経外科
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広田 健吾
東京女子医科大学東医療センター脳神経外科
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黒井 康博
東京女子医科大学東医療センター 脳神経外科
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笹原 篤
東京女子医科大学東医療センター 脳神経外科
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広田 健吾
東京女子医科大学東医療センター 脳神経外科
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萩原 信司
東京女子医科大学東医療センター 脳神経外科
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