痛みの制御に関する実験臨床心理学的研究(2) : 有害刺激が心拍・皮膚温に及ぼす影響の検討(<特集>行動療法と行動評価)
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概要
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本研究では,被験者が,特定の方略を用いながら,あるいは用いずに,冷水により誘発される痛み刺激にさらされているときの痛みの現象を,精神生理学的反応,マグニチュード推定値を測度として検討した。実験1では,男子大学生に方略を用いず利き手をできるだけ長く冷水の中に浸けさせ,実験セッション中とその前後の彼らの心拍と皮膚温を測定した。心拍は,高トレランス群では,実験セッションになると急増したが,低トレランス群では,特に変化を生じなかった。高トレランス群は,浸水中に心拍の急上昇により末梢の循環機能を高めるのだろうが,低トレランス群はそうした機能が劣るのであろう。一方,浸水した部位の皮膚温の回復は,高トレランス群の方が有意に早かった。こうした結果から,痛みの制御のための方略の効果をみるためには,被験者の精神生理学的条件への配慮が重要だということが示唆される。実験2では男子大学生を,実験者が操作するスライドを実際に鑑賞する群(overt群),あらかじめ覚えておいたスライドの内容をイメージする群(covert群),方略なしの群(control群)にふり分け,各条件のもとで,利手を冷水の中に浸けさせ,10秒ごとめ痛みの強さを報告させた(マグニチュード推定法)。実験セッション中とその前後での皮膚温の測定も行なった。covert群では,浸水時間が30秒を越えるものがごく少数だったため解析の対象とせず,overt群とcontrol群を比較した。結果は,マグニチュード推定値からみても,浸水中の皮膚温,その後の皮膚温の回復過程からしても,実験者が操作するスライドの鑑賞という方略は,特別の効果を発揮しないことを示している。しかし,筆者らの別の研究の結果との比較から,方略の操作者が本人自身か他者かという"self-external"の次元が方略の有効性に関わっており,"self"の性質をもつものの方が"external"のものより効果的なことが示唆される。
- 日本行動療法学会の論文
- 1984-09-30
著者
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