アメリカ合衆国草創期における寄宿制障害児教育施設の慈善性と教育目的・本質との関連
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概要
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本論文の目的は、19世紀前半のアメリカに開設された障害児の教育施設の開設趣旨とその変化について、学校関係者や当事者(親や障害者)がどのように関与したのかを明らかにすることである。1810年代後半以降に開設される聾唖院は上層の要望から創設が構想されたが、開設後、財源および関係者の関与の変更によって博愛的基盤から公共化への変化を辿る。しかし校長に聖職者が多かったこと、聾唖者は、第一次産業に就労可能で貧困問題が深刻でなかったことなどから、学校側の慈善性やスティグマに対する意識は低かった。これに対して1830年代初めに開設される盲院では、就労する場がないために、職業自立が最大の目標であったが、盲児に対する慈善視とスティグマの付与が職業自立の最大の障害となる。そのために、盲児が職業自立できるための教育の強化と社会的条件の整備を進めることによって、学校教育機関へ脱皮する基盤を作ることができた。1840年代末以降に開設される白痴学校は、教育と学校の概念から再編しなければならなかったが、聾唖院と盲院の成果を吸収し、その問題と限界を超える理論的・実践的可能性があった。
- 2010-03-25
著者
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