釈尊の思想と心理療法 (序説)
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概要
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問題意識はきわめて個人的な体験から始まっている。しかしそれは心理療法と仏教の接点とも言うべき事柄であると考えられる。筆者が20歳代の時、教育分析を受けることになり「私は何か」「私は誰か」を考えぬいていた。一週間が過ぎようとしたときその体験が起こった。一言で言えば、仏教の見性体験、一つの悟り体験であった。当時は何も知らずにただ自分は何かを追求しただけであった。偶然に訪れた体験であったが、その体験は私の人生を基礎付ける大きなものとなった。自分が無になり、空であることによって心理療法で重要な要素である自己一致、純粋性や共感能力がいっそう強くなったのであった。そこで今後は仏教の思想が心理療法の思想とどう一致し、どう違うのか。それら両者の本質は何かを探っていくことを目的とする。まだ釈尊の思想と心理療法について語られたものはほんの少数であり、日本人による考察はみられない。数少ない一人のアラン・ワッツはその著書(1991)の冒頭で次のように述べている。「仏教の生き方を深く調べてみると、そこには西洋で考えられているような哲学も宗教もなく、むしろ心理療法に非常に似かよったなにかがそこにみられる」と。その何かについては深くは考察はされていない。筆者はその何かを明確にしていくことを目的としたい。しかし今回は紙数の関係上、序論として釈尊の思想とその正伝といわれる道元の思想と禅の思想の概要を述べ、仏教の影響を受けた心理療法家にふれるにとどめ、細部については次回以降に譲りたい。
- 2010-03-01
著者
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