英語で研究活動を行う留学生に対する日本語教育の必要性 : 英語から日本語へのコードスイッチングの働きから(<特集>言語・コミュニケーションの学習・教育と社会言語科学-人間・文化・社会をキーワードとして-)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は,英語で研究活動を行う大学院のコース(以下,英語コース)に在籍する留学生の日本語教育の必要性について,会話分析により明らかにされた英語から日本語へのコードスイッチング(CS)の働きを通して考察する.本研究では,日本人学生と留学生の英語をペース言語としたグループディスカッションを分析対象とし,「日本人学生の参加促進」という観点からCSが使用言語による参加者の関係,及び日本人学生のターンに及ぼす影響を調べた.その結果,英語のみの使用では「英語非母語話者同士」である日本人学生と留学生が局所的に日本語へCSすることで,両者の間に「日本語母語話者-非母語話者」,「日英混合話者同士」という関係が構築され,英語使用に慣れていない日本人学生の参加を促しつつ,やりとりが進められることがわかった.日本人学生のターン獲得数,及びその内容からもCSが日本人学生の参加を促進することが示された.日本人学生と留学生間の英語のコミュニケーションを促進するこうした日本語の働きは,留学生が研究室という実践共同体に参画し,その一員として研究活動を進めることを助けるものである.このような結果から,英語コースの留学生にも研究の遂行のために日本語能力が必要であり,彼らに対する日本語教育では,特に研究仲間との円滑な人間関係の構築を可能にするコミュニケーション能力の養成が求められることが示唆された.
- 社会言語科学会の論文
- 2009-08-31
著者
関連論文
- 英語で研究活動を行う留学生に対する日本語教育の必要性--英語から日本語へのコードスイッチングの働きから (特集 言語・コミュニケーションの学習・教育と社会言語科学--人間・文化・社会をキーワードとして)
- 読解におけるフォーマルスキーマの活性化を通した異文化コミュニケーション能力の養成--学習者のMulti-competenceを活用して (第37回[お茶の水女子大学]日本言語文化学研究会発表要旨)
- 理工系大学院における日本語教育プログラムの成果と課題--英語で研究活動を行う留学生を対象に
- 理工系大学院生のための異文化コミュニケーション教育
- 接触場面のコードスイッチングが参与者に与える影響 : 多言語を背景にした大学院生のグループディスカッションを対象に
- 接触場面における日本語-英語間のコードスイッチングに関する実証的研究 : 理工系大学院の日本人学生と留学生のグループディスカッションの分析を通して
- 共生言語としての二言語使用の可能性 : 理工系大学院における日本人学生と留学生の日英間コードスイッチングの分析から(第34回 日本言語文化学研究会 ポスター発表要旨)
- 接触場面におけるコードスイッチングはコミュニケーション上の問題をどのように解決するのか : 理工系大学院生のグループディスカッションを対象に
- 接触場面における日本語から英語へのコードスイッチングの機能--二言語使用はグループディスカッションの促進をどのように助けるのか
- 日本人学生と留学生による英語ベースのグループワークにおける日本語へのコードスイッチングの機能(第29回 日本言語文化学研究会 発表要旨)
- 英語から日本語へのコードスイッチング--日本人学生と留学生のグループワークにおける機能
- 英語で研究活動を行う大学院における日本語教育の位置づけと方向性--理工系の留学生を対象として (特集 英語プログラムと日本語教育)
- キャリア形成と異文化間教育 (特集 キャリア形成と異文化間教育)
- 日本語研修コースにおける異文化教育プログラムの試み
- 会話の流れに着目した会話教育 : 談話構成要素と共話促進要素
- 非英語圏出身の大学院留学生のための英語教育の必要性--アンケート調査の結果から
- 英語をベースにした日本人学生と留学生のディスカッションにおける言語バラエティー
- 留学生と教育 国際交流担当者たちが体験した異文化コミュニケーション
- 科学技術系大学院留学生に必要な日本語教育--研究活動を支援するコミュニケーション能力・異文化理解能力の養成 (マルチカルチュラリズム--日本語支援コーディネータの展開) -- (事例編 各地域における日本語教育の現状と問題点)
- 日本人学生の異文化間コミュニケーション能力の養成--英語を共通言語として行う留学生とのグループワークを通して
- 実践報告 英語を共通言語とした大学院における異文化間コミュニケーションクラスの試み--タスク活動における教師の役割
- 初級日本語クラスにおける上級学習者との会話実習 : 相互行為を通して会話を構築する能力の養成を目指して
- 異文化間教育と「臨床の知」 : 「文化的多様性」の実践に向けて (特集 異文化間教育と「臨床の知」 : 「文化的多様性」の実践に向けて)
- 初級前半のクラスにおける会話活動「トピック J1」 : 日常生活に関する話題を発展させるために
- 大学院における初級日本語クラスの意義と可能性 : 英語で研究活動を行うコースの単位取得科目として
- 論理的な思考プロセスを通した日本語表現活動 : 大学院における初級クラスでのショートスピーチ作成・発表
- 学習者が話す力を自ら高めていけるようにするための会話教育
- 英語で研究活動を行う留学生に対する日本語教育の必要性 : 英語から日本語へのコードスイッチングの働きから(言語・コミュニケーションの学習・教育と社会言語科学-人間・文化・社会をキーワードとして-)