次世代シーケンサーを用いた5-Azacitidine5によるDNA脱メチル化と白血病細胞分化の解析
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概要
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骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndrome, MDS)は,被ばく後40年以上を経て徐々に発症が増加した1).これは急性白血病が被ばく後5-10年で急増するパターンを示したことと大きく異なっており,MDSの発症には長期間にわたるエピゲノム変化や点突然変異の蓄積が関与すると考えられる.実際MDSでは,一部の症例にDNA脱メチル化剤の5-Azacytidine(Aza)が有効で,2011年3月より本邦でも臨床の場で用いられている.5-AzaがMDSを改善するメカニズムは現在のところ明確でないが,投与後の急激な腫瘍細胞数減少がないにも関わらず,繰り返し投与されたのちに徐々に貧血が改善する症例があることなどから,少なくともAra<Wa>-<Oh>Cのような殺細胞効果だけが<Wa>5-<Oh>Azaの薬効作用ではなく,DNA脱メチル化作用がひとつの鍵になっていると思われる.一般に遺伝子プロモーターの脱メチル化は遺伝子発現を正に作用させるものであるが,だとすれば<Wa>5-<Oh>Azaはいったいどのような遺伝子の発現を制御し細胞の形質を変化させるのか,明確にしたいと考えた.このためわれわれは,DNA脱メチル化と遺伝子発現変化を網羅的かつ統合的に定量可能な次世代シーケンサーを駆使した解析により,<Wa>5-<Oh>Azaの作用メカニズム解析を試みた.その結果,DNA脱メチル化による翻訳制御機構の機能促進が造血細胞の赤血球系への分化に関わっていることが明らかとなってきたことを,本稿で報告する.
- 2012-09-25
著者
-
松井 啓隆
浜松医科大学第三内科
-
長町 安希子
広島大学原爆放射線放射線医科学研究所がん分子病態研究分野
-
尾崎 佑子
広島大学原爆放射線医科学研究所 がん分子病態研究分野
-
松井 啓隆
広島大学原爆放射線医科学研究所がん分子病態研究分野
-
稲葉 俊哉
広島大学原爆放射線医科学研究所 がん分子病態研究分野
-
稲葉 俊哉
広島大学原爆放射線医科学研究所がん分子病態研究分野
-
稲葉 俊哉
広島大学原爆放射線医科学研究所 血液内科
-
稲葉 俊哉
広島大学原爆放射能医学研究所癌分子病態
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