シンポジウム-4 緊急被曝医療と後障害フォローアップ:臨床サイドの課題
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概要
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被曝医療の要諦は,迅速で正確な個人線量評価に基づいた必要にして十分な緊急被曝医療と,急性期を乗り切った被爆者を対象とした晩期障害に対する長期フォローアップである. 被曝線量が2Gy以下では放置しても急性障害で死亡することは通常ない(図1). 十分な手当がなされない状況下では,ヒトの半数致死線量は3.5〜4Gy程度であるとされる. それに対し,抗生物質や中心静脈栄養などの支持療法,骨髄移植,サイトカイン投与など,現時点で行いうる最大限の医療を施せば,半数致死線量は6.5〜7Gy程度まで改善すると考えられている. すなわち,この3Gyの差が現在の医療が提供できる治療効果であるが,この差を一層拡大するのが本COEプロジェクトの目標のひとつである. また10Gyを超えると救命できる可能性は少なくなるが,この限界を引き上げることを目標とした基礎研究も重要である. 末梢血リンパ球染色体検査は,現在もっとも信頼性の高い個人線量評価法である. しかし熟練した技術と,結果が出るまで3日以上の検査時間を必要とし,手間もかかる. この欠点を克服するために,数時間で結果の得られる新しい方法を開発中である. 高線量被爆者では複数の臓器が不全に陥り,極めて悪化した全身状態での臓器移植や再生医療を与儀なくされる. これは全身状態が比較的良好で単一の臓器を移植する通常の臓器移植とは全く異なるものであり,組織幹細胞に対する基礎的な所見の積み重ねが必要であるが,紙数の関係で別の機会に議論する. 急性期を乗り越えた被爆者に対しては精神的なケアを含めた長期フォローアップを続けていくことになる. 高線量被爆者が救命されるようになれば,この点はますます重要となり,白血病やがんの発生を念頭に置いた遺伝子モニタ法を確立する必要ガ生じる.
- 長崎大学の論文
著者
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稲葉 俊哉
広島大学原医研分子細胞遺伝
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稲葉 俊哉
広島大学原爆放射線医科学研究所 がん分子病態研究分野
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稲葉 俊哉
広島大学原爆放射線医科学研究所がん分子病態研究分野
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稲葉 俊哉
広島大学原爆放射線医科学研究所 血液内科
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稲葉 俊哉
広島大学原爆放射能医学研究所癌分子病態
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