高齢者の生活継続を支える生活支援のあり方に関する一考察
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概要
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高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることを意図した政策の方向性は、2000 年4月の介護保険制度の導入やその後の法改正においても変わらず今日に続くものだといえる。介護保険制度によるサービス提供が開始されてから10年が経過した2010年3月に地域包括ケア研究会から出された「報告書」では、従来の方向性が引き続き示されるとともに、具体化するための方策として「地域包括ケアシステム」を構築していくことが提案されている。この地域ケアシステムとは、高齢者が地域での暮らしを継続していくために、中学校区を基本とする日常生活圏域内において、医療、介護、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスを提供していく体制である。高齢者の生活を支えるためには、介護保険によるサービス利用だけでは充分でないことを指摘しつつ、その構築に向けた取り組みとして高齢者のニーズに応じて、(1)住宅、(2)介護保険の給付対象ではないサービス、(3)介護保険サービス、(4)介護予防サービス、(5)医療保険サービスを一体的に提供していくことが考えられている。この地域包括ケアシステムが想定しているのは、身体的機能や知的機能の低下による要介護や要支援状態にあることや一人暮らし、高齢者夫婦のみなどの家族形態を高齢者の生活課題としてとらえ、サービスを提供することにより地域での生活継続を保障しようとしているものだといえる。しかしながら、高齢者の生活課題は、身体的、知的な機能低下によるものにとどまるものではない。そもそも、地域での生活の維持・継続を可能とするためには、高齢者自身が生活に対して日常生活行為等を行うことによって保たれる自立性とともに、どのように生活するのか等を自らで決定するという自律性を保持することが不可欠である。また、その支援では、高齢者の生活の維持・継続を可能とする支援の実践には、(1)見守り等にとどまるだけではなく、時には積極的な働きかけをとおして問題を発見するという、アウトリーチの視点、(2)生活上の個々の問題にのみとらわれず、その全体性、総合性に目を向けていくという視点、さらに、(3)個々の問題解決に向けた支援だけではなく、生活の維持・継続を支えることを想定したマネジメントの視点が必要になる。この視点を持った、ソーシャルワーク実践が求められるのだといえる。
- 2012-03-25
著者
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