イソップ寓話の変容と寓意性 : 明治・大正期出版「犬とその影」をめぐって
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概要
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「イソップ寓話」は海外の物語としては日本に最も早く入って来た物語である。その話の定かな数には多くの異論があり、今だ定まっていない。当研究では明治期から大正末期までに翻訳、再話された寓話の中で、いずれの出版物にもほぼ搭載されている「犬とその影」に限って、その表現形態から寓話としての特性である訓蒙までについて詳細に比較分析を試みた。その背景には、今日、保育教材の素材として扱われているにもかかわらず、「盗む」という用語が作品の冒頭から3回も使用され、さらに印刷を初版から4回重ねているにもかかわらず改訂版に至っていない実態について、果たして許容されている理由は何かを探求しようとしたことである。結果として、歴史的に時代を遡ると「盗む」というキーワードの表記されている作品、そうでなく「犬が肉塊を銜えて登場する」ところから始まる作品の両方ともが存在したことが判明した。また、読者は話の内容(展開)で充分に道徳律、いわゆる訓蒙を受容できるにもかかわらず、史的に著名な文人たちによって執拗に訓蒙の解説を力説し、多くのスペースを割いていることも時代の特性として検証できた。
- 2010-12-30
著者
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