日本産Chelariini族の4新種(鱗翅目,キバガ科)
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概要
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日本産Chelariini族(キバガ科)の分類を行う中で,Tornodoxa属に2新種,Empalactis属に1新種,Hypatima属に1新種を認めたので成虫,交尾器を図示するとともに,記載を行った. Tornodoxa dubicanella sp. n. コハイジロキバガ(Figs 1,5,9) 前翅長5.0-6.5mm.頭部,胸部は淡灰褐色.ラビアル・パルプス第2節は突出した三角形の大きな毛束を生じ,白色の先端部を除き黒色.前翅は白色で淡褐色鱗と黒褐色鱗を散布し,背半部は不規則に淡褐色鱗と黒褐色鱗に覆われる.前翅前縁は基部から翅頂にかけて5〜6個の黒色斑をもち,中央のものは大きく長楕円形になる.♂交尾器のuncusは幅広く,後縁中央部は深く切れ込み,valvaは短く後半部は大きくふくらむ.valvellaは太く,先端は外方に曲がり,saccus先端は丸くふくらむ.♀交尾器のapophysis posteriorisはapophysis anteriorisの約2.5倍の長さ.交尾口周辺はやや菱形の硬化板になり,交尾口は三角形.交尾嚢管は長く,前半部はコイルする.シグヌムは大きく,長方形で中央に稜をもつ.ヒメハイジロキバガに酷似する.分布:北海道,九州.寄主植物:不明. Tornodoxa paraleptopalta sp. n. ヒメハイジロキバガ(Figs 2,6,10) 前翅長5.5-7.5mm.ヒメハイジロキバガはコハイジロキバガに斑紋が酷似しており識別は困難であるが,ヒメハイジロキバガでは前翅のM1がR4+5の共通の柄から出るのに対し,コハイジロキバガではM1とR4+5は柄を持たないことで識別できる.♂交尾器もコハイジロキバガに似るがvalva下縁が波打つことで区別でき,♀交尾器ではシグヌムが大きなフック状になることで区別できる.分布:本州,九州.寄主植物:不明. Empalactis (Empalactis) ponomarenkoae sp. n. ニセツチイロキバガ(Figs 3,7,11) 前翅長4.5-6.0mm.頭部,胸部は灰白色に淡褐色を散布する.ラビアル・パルプスの第2節は突出した台形の大きな毛束を生じ,黒色,基部と先端部に白色条をもつ.ラビアル・パルプス第3節にも荒い鱗粉隆起をもつ.前翅地色灰白色で淡褐色鱗粉を散布する.前翅前縁に3つの黒褐色斑をもち,前方の2つは鱗粉隆起塊となる.中室に黒褐色の円形の斑紋をもち,後角にも黒褐色の円紋をもつ.♂交尾器のvalvaはS字状に波打ち,先端付近背縁に三角形の張り出しをもつ.♀交尾器のapophysis posteriorisはapophysis anteriorisの約6倍の長さ.シグヌムは大きく,菱形で中央に鋸歯状の稜をもつ.斑紋はマメキバガE.(E.)leguminella(Ponomarenko,1993)とツチイロキバガE.(E.)neotaphronoma(Ponomarenko,1993)に似るが,前翅前翅のR4+5がM1と長い柄をもたず,分離することで区別できる.分布:本州,九州.寄主植物:不明. Hypatima teramotoi sp. n. チャマダラノコメキバガ(Figs 4,8,12) 前翅長6.0-7.0mm.頭部,胸部は灰褐色.ラビアル・パルプス第2節は黒褐色で,2つの三角形の密な毛束をもつ.前翅は灰褐色で複数の鱗粉隆起塊をもつ.後縁は広く黒褐色,前縁も1/3から翅頂まで濃褐色.♂交尾器のvalvaは内面に三角形の板状の張り出しをもつ.♀交尾器のapophysis posteriorisはapophysis anteriorisの約2倍の長さ.シグヌムは大きく,1対の三角形の板状突起をもつ.日本産Hypatima属からは特徴的な色彩で区別は容易.分布:本州,九州.寄主植物:クヌギ,アベマキ,コナラ,アラカシ,ウバメガシ.
- 2012-06-20
著者
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上田 達也
Entomological Laboratory The Graduate School Of Agriculture And Biological Sciences Osaka Prefecture
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上田 達也
Entomological Laboratory College Of Agriculture Osaka Prefecture University:(present Office)regional Environmental Planning Inc.
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