透析患者における大動脈壁の異所性石灰化の臨床的意義

概要

論文の詳細を見る
透析患者において、血管石灰化は心血管疾患と関連があると報告されている。血管石灰化の程度は、computed tomography (CT)で定量化が可能であるが、われわれは、低被爆で簡便な胸部単純X線から大動脈弓部の石灰化率(aortic arch calcification score; AoACS)を算出した。 multi-detector CTで求めた大動脈弓部の石灰化体積との相関性を検討したところ有意な相関を示した。AoACSと左室拡張障害との関与を検討したところ、AoACSは左室拡張障害の独立した寄与因子であることが判明した。4年間の観察期間では、AoACの存在は総死亡率や心血管死と関連を認めた。観察終了時と開始時のAoAC値の変化により進行群と非進行群に分類し、関与する臨床的因子を抽出したところ、AoACの進行群は非進行群に比し若年であり、1a-水酸化ビタミンDの経口投与量が多い傾向にあった。近年の報告にあるビタミンDの心血管疾患抑制の機序として、ビタミンDの血管石灰化抑制がその一因である可能性が示唆された。さらに、近年Ca、P代謝に重要な因子であることが報告されているFibroblast growth factor-23(FGF-23)とAoACとの関連を検討したところ、透析導入時の非糖尿病腎症透析患者においてΔAoACSの独立した寄与因子がFGF-23であった。このことから血清FGF23が血管石灰化を抑制する可能性が示唆された。これらの結果から、胸部レントゲンでの大動脈弓部の血管石灰化は、透析患者の予後を予測するだけでなく、石灰化を抑制する因子あるいは治療法を検討するうえで重要なマーカーであると考えられる。
2012-07-31

透析患者における大動脈壁の異所性石灰化の臨床的意義

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク