竹林の拡大状況からみた大学緑地の環境保全と適正利用
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概要
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竹林は、適正な管理をおこなえば竹材・タケノコの生産が可能となる森林資源である。しかし近年、放置された竹林はやぶ状化が進み、周囲林への拡大が問題となってきた。竹林は広義の里山の一部であり、竹林の拡大は二次林としての里山の荒廃と表裏一体の関係にある。本論文は、首都大学東京の所有する松木日向緑地の持続可能性について、主に竹林拡大の観点から問題点を探ることを目的とする。当該緑地の二次林としての管理・運営上の問題点については、すでに別稿(鈴木・鈴木2009)で論及した。本論文は、里山の荒廃が竹林の拡大状況とどれほど関係しているかについて、定量的に把握することをめざす。まず、現地踏査およびGISを用いた植生分布解析により緑地内の竹林の分布面積を計測した。同時に移転以前からある竹林(古竹林)と移転後に拡大した竹林(新竹林)内の稈密度を測定し、大学移転前(1984年)と現在(2008年)の間で竹林拡大の状況の解明を試みた。分析の結果、竹林の分布面積は、移転前の3.2haから現在の4.3ha へと1.4倍拡大していることが明らかになった。また、古竹林と新竹林の竹密度は、それぞれ平均72本、90.3 本(/100 m^2)でありいずれも過密状態にあることがわかった。竹林の拡大を防止するには、皆伐や整理伐による竹林の適正管理を図る必要がある。大学側がその予算や人力を賄うことは難しい。教職員、学生、地域住民が一体となった計画的な管理体制の構築が不可欠となろう。
- 2009-03-30
著者
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