社会構築主義における理論的潮流の再整理の試み : 「ハンセン病当事者のライフストーリーにみる健康自尊意識研究」の前提として
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概要
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本稿は,「ハンセン病当事者のライフストーリーにみる健康自尊意識研究」の一貫した視点である社会構築主義に焦点をあてることとした.つまり,社会構築主義の定義を示したうえで,20世紀後半以降の社会構築主義の理論的潮流,とりわけ専門援助論に引きつけたその理論的潮流の再整理を試みた.結果,以下9点について,整理がなされた.(1)マルクス主義では,労働力として価値を持たないことが社会的不利,社会的スティグマを負わされることになり,またその体制維持のため「社会問題」として扱われるとされる.(2)マルクス主義への批判的立場は「客観的な基準や科学的な法則は存在しない」とした.(3)フーコーは,「自己統治性」の概念を打ち出し,権力や政治的な思惑が個人や身体やまなざしにきめ細かく貫徹,統治していくとした.(4)千田は,社会構築主義の理論的潮流の系譜を「社会問題をめぐる系譜」「物語叙述をめぐる系譜」「身体をめぐる系譜」に分類した.(5)フーコーは,専門家は支配的な言説を定義し,また「真理truth」の所有権をもち,その対象にある人は支配に晒され抑圧されるとした.(6)ポストモダニズムあるいは社会構築主義の考えは,1980年代後半,急激に専門援助者,とりわけ心理臨床の領域を中心に取り入れられていった.(7)マーゴリンは,フーコー思想を基盤にし,社会構築主義専門援助(ソーシャルワーク)論を展開した.(8)ジョンソンとグラントは,社会構築主義の視点から,専門援助の展望を開くためには,当事者の構築している世界観・文化観を共有する能力cultural competenceがその切り口になるとした.(9)社会構築主義の視点は,クライエントがどのように抑圧を受けてきたのか,またどのように内在化しているのか,そして,そこに立ち向かっているのか,を専門援助者が共同的対話によって,そのコンテクストを知り,学ぶツールとなる.
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