ハンセン病当事者のライフストーリーにみる健康自尊意識(HE)研究 (2) : ストーリーのダイナミクスと健康自尊意識(HE)の形成要因
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概要
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本研究の目的は,社会構築主義の立場から健康や福祉の目標を「生きている」ことの充実感そのもの (=健康自尊意識 HE:Health Esteem) として捉え,その境地にあるハンセン病当事者の語りを通して,健康自尊意識 (HE) の規定要因を,対話的構築主義アプローチの手法を用い構造分析をなすことである.これに関してすでに本学会誌上にて,「医療福祉学に基づく健康格差に関する研究 (2) -ハンセン病問題当事者のライフストーリーにみる健康自尊意識(HE)」研究を試みたところである (熊谷他,2009).本稿では,その考察結果の普遍性を追究すべく,別のハンセン病当事者の聞き取りを通して,同じく対話的構築主義アプローチを用い構造分析を試みた.抽出されたコードは「12歳での入所」「退所そして再入所」「赤痢の罹患そして病気の進行」「何回死のうとしたかわからない時代」「新薬プロミンの登場」「アプレゲールの時代」「救いを友人と宗教に求めた時代」「患者運動の中で」「自分を表現する手段としての点字」「ハーモニカ楽団の結成」「ミッションの招きでスイスへ」の11項目に及んだ.ライフストーリーの構造分析の結果、先行研究ですでに検証されている「マスターナラティヴ」「モデルストーリー」さらに「新しいストーリー」の抽出とその力動性が再確認された.また,健康自尊意識 (HE) の形成要因についても「利用者文化に支えられたストレングス要因」と「実体ある解放・復権の要因」が検証され,加えて「公からの他者承認の要因」が健康自尊意識 (HE) に影響を及ぼしていることが明らかになった.
著者
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