「気になる子ども」に関する保育科学生の視点 : 教育実習での経験からの分析と保育者視点との比較
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概要
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本研究は、保育科学生が教育実習で出会った子どのたちのうち、「気になる子ども」として捉えた視点を明らかにするために、調査1においては、学生の自由記述を中心に、年齢別・性別の集計をまとめた。その結果、回答内容は432項目に整理され、上位 10カテゴリーに分類された。内訳は、「多動・衝動性」「言葉遅れ・コミュニケーション」「発達の遅れ・動作緩慢」「情緒」「発達の遅れ・理解力・手の運動・ADL未自立」「障害・習癖・偏食等」「集団参加」「攻撃性・他害」「自閉傾向」「対人関係」の10であった。回答を多い順に整理すると、「多動・衝動性」「言葉の遅れ・コミュニケーション」「発達の遅れ・動作緩慢」となり、この3カテゴリーが全体の約50%であった。「多動・衝動性」は男児においては、年少・年中・年長のいずれの学年においても第1位であった。女児については、年中では第3位であったが、年少・年長は男児と同様「多動・衝動性」が1位であった。このことから、学生が捉えている「気になる」行動は、部屋から出て行ってしまうなどの落ち着きのなさや、集中力の欠如といったものであることがわかった。 調査2の「気になる子ども」に関する先行研究における保育者の視点との比較から、保育者は、子どもの姿を捉える際、常に原因や経過、周囲との関係、子どもの心の内面まで観察しているのに対して、学生は目の前の子どもの姿に捉われ、その姿だけから「気になる」と捉えていることが明らかとなった。さらに学生は、言葉や発達の遅れ、習癖や偏食があると、「気になる行動」や「遅れ」と判断しているようであるが、保育者は子どもの成長を長い目で捉えており、これらをすぐに「気になる」とは見ていないことが明らかとなった。 大学の養成教育において、他児との比較や保育者の動きだけから行動を判断するのではなく、原因や経過など前後の状況を観察し、子どもの気持ちまで考えられる視点などを学生が習得できるようにすることが課題とされた。
- 2010-12-20
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